45m電波望遠鏡のアンテナシステム

1982年に観測を開始した45m鏡は、当時の我が国における最高の技術を結集して建設され、 その高性能と大口径は世界の電波望遠鏡開発史の記録を大きく塗り変えた。 また、その後も共同利用観測の合間をぬって性能向上のための努力が払われており、 現在でもミリ波観測では世界のトップレベルに位置している。

45m鏡の特徴はいくつかあるが、ここでは自重変形や熱変形等の対策、天体追尾方式、ビーム伝送系、 主鏡面の調整方法等についてのべる。

ホモロガス変形法
地上に電波望遠鏡を設置する限り、高度角の変化による自重変形は避けられない。 そこで、自重変形をホモロガス(相似的)にすることによって実際上の集光力を維持しようとする数学的検討が 1960年代の初期に試みられ、1972年に建設されたボンの100m鏡の構造に初めて採用された。 45m鏡の設計にあたっては、このホモロガス変形法を導入し、 自重変形によって引き起こされる焦点位置の変化に応じて、副鏡が駆動する機構となっている。
熱変形対策
電波望遠鏡は昼間も観測を行うため、日射による熱変形も重要な検討事項である。 45m鏡の主鏡面パネルは、その大半が金属よりもはるかに熱膨張係数が小さい CFRP(炭素繊維強化プラスチック)で両面をおおったハネカムサンドイッチパネルで構成されている。 また、主鏡の背面を断熱パネルでおおうことにより日射を防ぎ、密閉した骨組み構造内を 50台のブロアで空気を攪伴することで、熱の分散を図っている。また、副鏡を支える3本のステイにも、 熱変形を防ぐカバーが取り付けられている。 一方、建設後アンテナ各所に設置した温度センサーによって、熱変形の原因が明らかになってきた。 そこで、主鏡内へのブロアの増設、センターハブ周辺へ日除けカバーを取り付けるなどして、改善を図っている。
天体追尾
電波望遠鏡では、ビーム幅の数分の1以内という高い指向精度が要求される。 例えば、45m鏡で波長2.6mmのCOのスペクトル線を観測する場合ビーム半値幅は14秒角なので、 3秒角程度の指向精度が必要となる。そこで、45m鏡ではマスターコリメーター方式を導入している。 これは、電波望遠鏡の中心に独立した基礎から立ち上げたタワーを設け、高精度の望遠鏡を搭載、 この望遠鏡をコンピューター駆動し、光ビームでリンクすることで主鏡を追随させるものである。 この結果、45m鏡の追随誤差は±0.5秒角となっている。
指向精度は、強い点状の電波源を実際に観測することで検定できる。 全天の指向精度測定から得られた固定誤差を器差ファイルとし、観測の際には常時補正される機構にしてある。 その結果45m鏡の指向精度は、夜間、快晴、無風の好条件の下で3秒から5秒角程度となっている。
この他、温度モニターに基づく補正、光学望遠鏡を用いた位置測定等が行われ、副鏡モニターによる補正も検討している。
ビーム伝送系
電波は、光と同じように反射鏡によって方向を変えることができる。 45m鏡では、主鏡で集めた電波を、反射鏡で機器室に設けた受信機まで導く。 第4反射鏡は電波を3方向に切り替えることが可能で、ここからさらに反射鏡を用いることによって、 合計11台あるどの受信機にも電波を導くことができる。また、偏波膜を組み合わせれば、 異なる2周波を同時に観測することもできる。
主鏡面の調整方法
主鏡がどんなに大きくても、鏡面の凹凸が大きければ、電波は乱反射して焦点に集まらない。 45m鏡では、建設当初レーザー測距測角儀で主鏡パネル一枚一枚を測定することによって鏡面調整を行っていたが、 1985年から電波ホログラフィ法を導入した。これは、人工衛星から発射されている19.45GHzのビーコン波を利用し、 位相分布から鏡面誤差を求める。このデータに基づいて、約600枚のパネルをそれぞれ 10μmのステップで上下駆動することで、鏡面精度を高めていく。これまでの最高は、70μm(rms)。
45m鏡は建設後24年を経過しているが、当時は予想し得なかった問題も発生した。 そのひとつは水平(Az)レール基礎部の不等沈下で、高低差0.7mm/年程度づつ北西方向に傾き続けている。 このため、1994年に部分改修を行った。また、低高度角で主鏡に異常変形が起きることがわかったので原因を調査したところ、 骨組み構造を締結しているボルトの劣化が認められ、1996年に約1000本のボルト交換を行った。 さらに1997年に行った日除けパネルの交換によって、約4トンもの水が含まれていたことが明らかになった。
このように45m鏡は、様々な問題を克服しつつ精度の向上をめざしている。

2006-12-09 nro45mrt @ NRO