45mのアンテナで集められた電波はいくつかの鏡によって反射され受信機へと伝送されます。 宇宙からの電波はとても微弱なため、宇宙からの電波を分析するには、 非常に感度がよく雑音の少ない検出器、増幅器が必要になってきます。 現在45m望遠鏡には22GHzから230GHzまでの周波数帯域が観測可能なように、 約10台の受信機が設置されており、観測目的にあった周波数帯域の受信機を使用して観測を行います。
受信機は扱う周波数によって、受信した電波(Radio Frequency、以下RF)を直接増幅するものと、 まず、非線形回路(ミクサ)によって周波数変換して取り扱いのし易いより低い数GHz以下の中間周波数 (Intermediate Frequency,以下IF)に変換したのち増幅していくものとあります。 もちろん、はじめに周波数変換する場合、ミクサ変換損のため受信した電波エネルギーの多くの部分を失ってしまうので、 直接増幅するのが望ましく、実際45m望遠鏡でも40GHz以下ではRFを直接増幅するタイプの受信機が用いられます。 しかし、RFが40GHz以上では周波数が高く直接増幅できる低雑音のアンプを作るのはとても難しいので、 極低温(絶対温度で4K程度)に冷却したSISミクサ*など、 極力変換損失を少なくしたミクサを用いて周波数変換を行う受信機を主に使用しています。
下の写真は40GHz帯のHEMT(ヘムト)受信機です。 アンテナで集められたRF信号をまず直接、20Kに冷却された低雑音のHEMTアンプで増幅した後、 ミクサで取り扱いやすい周波数に変換するというタイプの受信機です。
アンテナから来たRF信号はホーンを通って、アンプやミクサを冷却するためのデュワーに導かれます。 ホーンで集められたRF信号は反射によるスタンディング*防止のため、 アイソレータを通りHEMTアンプで増幅され、 必要な信号に分離するためのリングフィルタで局部発振信号 (Local Oscillator frequency, LOまたはローカル信号という)と一緒になってミクサへと導入されます。 ローカル信号は観測する周波数を決める大切な信号なので、 PLL*(Phase Lock Loop、フェイズロックループ)によって局部発振信号の周波数がずれていかないようにします。

45m鏡に搭載されているH40受信機
1998年の4月、45m電波望遠鏡に、25個の目玉を持つ「25 BEARS (25 BEam Array Receiver System)」が搭載され、 その複数の目で天体からの信号を受けることに成功しました。 初めて受けた天体はオリオンKLという電波源でオリオン座の小三ツ星の真ん中、 オリオン大星雲の近くに位置する、星が活発に誕生している領域です。
この受信機は、受信した電波を取り扱いのしやすい中間周波数に変換した後に増幅するタイプの受信機(SIS受信機)です。 その特徴が電波天文学を大きく発展させるものとして注目を浴びています。 これまで、電波望遠鏡の観測では1回の観測で1つの受信機しか使えなかったので、 広い領域の電波源を観測するには、1点1点観測する場所をずらして観測し、時間をかけてようやく、 1つの電波写真を得ることができていました。 ところが、この受信機は観測する空の領域の25点を同時に観測できるので、 今までの25倍の速さで観測することができるようになったのです。 つまり、この受信機一台で45m望遠鏡が25台あるのと同じ仕事ができるのです。
空にたくさんの星があるように、宇宙からの電波もまた空の至る所から降り注いでいま す。それらをすべて観測するには、とても時間がかかりますが、この受信機を使ってたく さんの電波天体を観測すれば、星の誕生や活動銀河の謎も解明される日は近いでしょう。

BEARSの受信機ユニット。
電波の入り口となる誘電体レンズが25個並んでいるのが見える。