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電波天文学入門

用語集

解説

アンテナ

電波を送受信する装置。ラジオやテレビの放送の受信では線状のアンテナが使われるが、センチメートル波より波長が短くなると、パラボラアンテナを使って電波を受信する。

一酸化ケイ素(SiO)

ケイ素の一酸化物。原始星や新星爆発から吹き出すガスに多く含まれる。

位相揺らぎ(地球大気)

電磁波は、理想的には平面波である。しかし、現実には大気の屈折率の揺らぎによって、平面波から歪む。この歪みを位相揺らぎと言う。この歪んだ電磁波を観測すると、像がふらついたりぼやけたりする。このため、天文学者は位相揺らぎの小さい場所、具体的には高地や宇宙での観測をめざす。ただし、高地であっても位相揺らぎは存在する。これを除去するための工夫を位相補償と言う。

EVLA (expanded VLA)

VLAの高性能化のための現在進行中の計画。

宇宙電波

天体や宇宙空間からの自然の電波。ジャンスキーが1933年にその発見を発表した。

宇宙年齢

WMAP 衛星による宇宙背景放射の非等方性(物理性質が、観測する方向によって違う事)の観測と、その解析によって、現在の宇宙の年齢は、137億年と求められた。

宇宙背景放射

宇宙のどの方向からも(ほぼ)等方的に受信できる電磁波。ビッグバンから38万年後に電離していた陽子と電子が結合して水素原子になったときの宇宙の状態を示している。当時は 3000 K(ケルビン:1K = 摂氏-273度)のプラズマ状態であったが、現在は約1100倍に波長が引き伸ばされ、2.725Kの黒体放射のスペクトルになっている。ペンジャスとウィルソンの4080 MHz での電波の観測によって1964年にその存在が確認され、ビッグバンの証拠の一つとなっている。

開口合成

干渉計観測のやり方。ライルにより発明され、これによってライルはノーベル物理学賞を受賞した。地球の自転を利用して、干渉計を構成する数々のアンテナペアから開口面を合成する。

角度分解能

望遠鏡が持っている性能の一つ。どれだけ近い2つの点源を分離して観測できるかという能力。単一鏡では(波長)/(望遠鏡の直径)ラジアン(角度の単位:1ラジアン=約57度)程度の数値であり、同じ直径の望遠鏡であれば波長が短いほど、同じ波長であれば望遠鏡の直径が大きいほど角度分解能が高い。干渉計では、複数台のアンテナ群を一つの望遠鏡と考えるので,「望遠鏡の直径」は干渉計をつくるアンテナ間の距離の代表的な値を用いる。すなわち、(角度分解能)=(波長)/(アンテナ間の距離)となる。アンテナを人工衛星によって宇宙に打ち上げた場合、分解能は(波長)/(地球の半径)ラジアンより高い角度分解能が得られる。ただし、(波長)/(望遠鏡の直径)ラジアンは理想的な値で、地球大気の揺らぎによって天体からの電波の波面が乱されるので、実際にこの理想値を得ることは難しいことが多い。よって、大気揺らぎの影響の少ない高地や宇宙で観測を行ったり、位相揺らぎの補正を試みたりする。

干渉計

複数台のアンテナを用いて結合して観測を行うときの電波望遠鏡のこと。地上で単一鏡を建設する場合、その直径には限界がある。そのため、開口面積(アンテナ表面の総面積)や角度分解能に限界を生ずる。干渉計は、有効開口面積が、ほぼ各望遠鏡の開口面積の和になるため、集光力を単一鏡に比べて向上できる。また、基線長(アンテナ間の距離)を長く取ることができるので単一鏡に比べて角度分解能を向上できる。

感度

望遠鏡が持っている性能の一つ。どれだけ弱い電波を観測できるかという能力。望遠鏡の有効開口面積が広ければ感度が上がる。電波望遠鏡の場合、受信機の雑音温度や、地球大気からの雑音、大気による電波の吸収によって感度が下がる。地球大気の悪影響を下げるため、影響の少ない高地や宇宙で観測を行う。

活動銀河核

銀河中心に存在するブラックホールのまわりには、ガス円盤が形成され、高エネルギー現象が起こっている。このような高エネルギー現象を起こしている銀河中心核を活動銀河核と言う。その例が電波銀河やクェーサーである。

鏡面精度

パラボラアンテナの鏡面の回転放物面からのずれ。この値が小さいほどアンテナの能率が良い。回転放物面からのずれが波長の20分の1以下であることが望ましく、これよりも鏡面精度が悪いと集光力を著しく損ねる。

銀河系

太陽を含む数千億個の星からなる銀河を銀河系と呼ぶ。「天の川銀河」、「我々の銀河」と呼ばれることもある。太陽系は銀河円盤の中に存在しているため、可視光では、星間ダストの阻まれて銀河円盤全体を見透すことができない。そのため、赤外線や、電波での観測が必要になってくる。

銀河系中心

銀河系の中心は、激しい星形成や、高エネルギー現象が起こっており、電波天文学の重要なターゲットになっている。中心には超大質量ブラックホールが存在すると考えられている。

クエーサー

中心が極端に明るい銀河中心核。はじめは quasi-stellar radio source(準恒星状電波天体)と呼ばれていた。もともとは電波を強く放つ天体として観測され、可視光で追随して観測されたからである。現在は、電波の強弱に関係なくクェーサーと呼ばれる。

原始星

分子雲コアの中での形成されたばかりの星。分子雲コアの物質が降着していてその解放された重力エネルギーを放っている。星の質量は物質の降着とともに増加していく。ただし、分子雲コアに囲まれているために可視光では観測できない。サブミリ波の天文学の観測対象の一つである。

COBE衛星(Cosmic Background Explorer)

ほぼ等方であると考えられていた宇宙背景放射は、実は完全には等方ではなく,10万分の1程度の揺らぎがある。1989年に打ち上げられたCOBE衛星によってこのことが確認された。この揺らぎがもとになって,現在の宇宙のあらゆる構造が形成された。

雑音

電波望遠鏡の受信機が受け取る電波のうち、目的としている天体以外からの電波。地球の大気による雑音、アンテナからの雑音、受信機自体が発生する雑音がある。雑音を低く抑えることが高感度観測のための必須な条件である。

サブミリ銀河

宇宙初期の銀河のうち,サブミリ波の連続波の観測で発見された銀河。赤外線光度に換算して10兆太陽光度にも相当するサブミリ波光度を呈している。

視野

電波望遠鏡が一度に観測できる空の範囲。

周波数

単位時間(1秒)に通り過ぎる電磁波の波の周期の数。単位はヘルツ(Hz)。波長とは次の関係にある:(波長)×(周波数)=(光速度)。光速度は真空中で秒速約30万キロメートルである。

周波数分解能

天体からの信号を分光したときに、どれだけ近い周波数成分を見分けることができるかという能力。

スペースVLBI

VLBI のうち、アンテナを宇宙に置いてそのアンテナと地上にあるアンテナとの天体からの信号の処理(相関処理)を行うもの。角度分解能はアンテナ間の距離(基線長)に反比例して高くなるが、地上のアンテナのみでは地球の直径以上の基線長を得ることができないので、その限界を宇宙にアンテナを打ち上げることによって打破する。

スペクトル

電磁波の周波数(波長)ごとの強度分布のこと。電磁波を観測する場合,全ての周波数の成分が一体となってやって来るが、分光することによってスペクトルに分解することができる。

赤方偏移(ドップラー効果)

電磁波を発生している源(例えば天体)が、観測者から遠ざかっているときにスペクトルがもともとの波長より長くなる(周波数は低くなる)。この偏移の大きさのこと。

赤方偏移(宇宙論)

全ての電磁波は、宇宙膨張の分だけ波長が引き延ばされて観測される。例えば、現在の宇宙のスケールが現在の半分だった時に発した電磁波は、波長が2倍に引き延ばされて現在観測される。

星間空間

宇宙の星と星の間の空間のこと。地上の尺度からすると真空であるが、希薄ながらも星間物質が存在する。

星間物質

星間空間に存在する希薄な物質のこと。星間プラズマ、星間ガス、星間ダストがある。

星間ダスト

星間空間に存在する固体物質のこと。星間塵とも呼ばれる。希薄ではあるが、その視線方向の厚みによって星の光を隠す場合がよくある。天の川の星々の中に所々星間ダストに隠されて暗くなっている場所があり、ここを暗黒星雲と言う。星間ダストは星間ガスと混在する。

星間ガス

星間空間に存在する気体物質のこと。星間ダストと混在する場合がある。

星間プラズマ

星間空間に存在する電離された物質のこと。

星間磁場

星間空間に存在する磁場。太陽の周りの平均的な磁場の大きさは数マイクロガウスである。ちなみに、地磁気は日本付近では約300ミリガウス。

星間化学

星間分子の化学反応を研究する学問。ミリ波やサブミリ波の天文学の重要な分野の一つ。

星間分子

星間空間に存在する気体分子のこと。分子雲では組成のほとんどを占める。

赤色巨星

星の中心部で水素が枯渇したあと、外層が膨張している状態の星。表面温度は中心で水素が核融合反応を起こしていたとき(主系列星)よりも低く、赤色に見える。

センチメートル波

波長が1センチメートルから10センチメートルの電波。

線スペクトル

電磁波を分光したスペクトルの場合,ある特定の周波数だけ強度が強くなったり弱くなったりすることがある。強くなっている場合を輝線、弱くなっている場合を吸収線と言う。

相関器

干渉計では、2台のアンテナからなるペアごとに、信号を合成する。これを行うのが相関器である。相関器の出力を全てのペアについて求め、コンピュータによって天体の画像を合成する。相関器は、分光器の役割も果たす。

速度場

ある天体を観測した場合、その天体は地球に近づいていたり、または遠ざかっていたりする。この天体の地球に対する速度を相対速度と呼ぶが、一つの天体においても、天体内の場所によっては観測した速度が相対速度と異なる。線スペクトルのドップラー効果から求められるこの速度を場所ごとに表示したものを速度場と言う。例えば,回転している天体の場合,観測者に近づいている側と遠ざかっている側が速度場によって明瞭に分かる。

太陽電波

太陽が自然的に発生する電波。とくに、太陽フレアの時に強い電波を発生する。第2次世界大戦中に発見された。

太陽フレア

太陽面での爆発現象。太陽の外層大気で、磁気エネルギーを解放するとき,さまざまな周波数で電磁波を発生する。

単一鏡(シングルディッシュ)

アンテナを1台だけ用いて観測を行うときの電波望遠鏡のこと。

WMAP衛星 (Wilkinson Microwave Anisotropy Probe)

宇宙背景放射の非等方性をCOBE 衛星よりも詳しく観測するために打ち上げられた衛星。2001年打ち上げ。宇宙背景放射の揺らぎを解析することによって、数々の宇宙論パラメータが解明された。

中性子星

太陽の10倍程度より大きい質量を持つ恒星は、星の進化の最後に、超新星爆発を起こす。このときに星の中心部は重力崩壊し、収縮して中心部に中性子星あるいはブラックホールを残す。典型的な半径は10キロメートル程度で、水に対する比重は1000兆程度。1967年に,規則正しい電波パルスを発するパルサーがベルとヒューイッシュによって発見され、中性子星であることが分かった。

中性水素原子ガス

星間空間では、水素が1原子分子になりうる。この星間ガスを中性水素原子ガス、あるいは、HIガス(エイチワンガス)と言う。波長21センチメートルの線スペクトルを放出する。この線スペクトルを電波望遠鏡で受信することで,星間ダストに隠された銀河系中心の向こう側の観測を初めてすることができた(1958年)。

超高光度赤外線銀河

光度が太陽光度の1兆倍以上の銀河。ただし、可視光や近赤外線で見える星の光よりも、星間ダストの放出する遠赤外線がずっと卓越している。重力相互作用や合体を起こしている最中の銀河であり、それが原因になって爆発的星形成を起こして遠赤外線での高光度の原因になっていると理解されている。

電磁波

光速度(真空中で秒速約30万キロメートル)で空間を伝わる電場と磁場の周期的変動の波。周波数あるいは波長で表される。波長の長い(周波数の低い)方から順番に、電波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、ガンマ線と呼ばれる。

電波

電磁波のうち、波長が最も長い(周波数の低い)もの。波長0.1ミリメートル以上。波長によって、メートル波、センチメートル波、ミリ波、サブミリ波などと名付けられている。

電波天文学

天体や宇宙空間からの物質からの自然の電波を受信することによって、天体や宇宙の性質や成り立ちを研究する学問。ジャンスキーによる宇宙電波の発見(1933年発表)により電波天文学が始まった。

電波望遠鏡

望遠鏡のうち,電波を受信することを目的につくられたもの。

電波銀河

電波でとくに明るく見える銀河。電波(とくにセンチメートル波)の構造は、コア、ジェット、ローブからなる。中心に超大質量ブラックホールがあり、そこに落ち込む物質の重力エネルギーがエネルギー源となっていると考えられている。

ドップラー効果

電磁波を発生している源(例えば天体)が、観測者から遠ざかっているときにスペクトルがもともとの周波数より低くなる(波長は長くなる)。逆に,近づいているときは線スペクトルがもともとの周波数より高くなる(波長は短くなる)。これを、音波のドップラー効果に倣って電磁波のドップラー効果と言う。この周波数や波長の偏移の大きさから、天体との相対速度を知ることができる。

透過率(地球大気)

宇宙から地球にやってくる電磁波のうち、一部は大気によって吸収され、残りが地表に届く。この地表に届く割合を地球の大気の透過率と呼び、通常0(電磁波が全く届かない)から1(電磁波が全て届く)で表す。これは、電磁波の周波数(波長)ごとに異なる。例えば,エックス線やガンマ線、遠赤外線は、常に透過率はゼロである。可視光の透過率は晴天ならば1に近い。電波でも、周波数(波長)ごとに地球大気の透過率は異なる。また、気象条件によっても地球大気の透過率は変動する。天文学者は、1に近い高い透過率を求めて、天候のいい場所や,高地・宇宙での観測を志向する。

透過率(星間空間)

電磁波の波長によって、星間物質に対する透過率は異なる。例えば、原始星の場合,可視光では星の周りのダストに隠されて透過率が低く、原始星自身を観測することはできない。そのため、透過率の高い赤外線やサブミリ波で観測することになる。

Tタウリ型星

原始星のあと、普通の星(主系列星)の前の進化段階にある星。星が収縮している。星の物質の物質が晴れ上がり、可視光で観測できるようになっている。

熱的放射

物体の熱運動によって放射される電磁波のこと。

野辺山電波へリオグラフ

野辺山にあり、名古屋大学が運用している太陽専門の電波望遠鏡。84台のアンテナを使い、直径500mの電波望遠鏡に相当する解像力を実現している。最大で毎秒10セットの太陽全面画像を得ることができる性能を活かし、ビデオカメラのように太陽の活動をモニターしている。1992年4月に最初の太陽電波画像の撮影に成功し、同年6月末より毎日8時間の連続観測を行っている。

野辺山電波強度偏波計

野辺山宇宙電波観測所に設置されている。太陽全体からくる電波の強さと偏波を測定し、太陽活動の様子を調べる。8つのパラボラアンテナを使い、7つの周波数を同時に観測している。

野辺山ミリ波干渉計

野辺山宇宙電波観測所に設置されている電波干渉計。6台の直径10メートルのアンテナをケーブルでつないで同時に観測することで、直径数百メートルの電波望遠鏡に相当する解像力で天体画像を描き出す。現在は科学的観測運用を停止している。

野辺山太陽電波観測所

1968年に開所し、2015年3月に閉所した。国立天文台に所属する観測所のひとつ。所在地は長野県南佐久郡野辺山。主力装置は野辺山電波へリオグラフと野辺山電波強度偏波計。閉所に伴い2015年4月から電波ヘリオグラフは名古屋大学が運用を引き継ぎ、強度偏波計は、宇宙電波観測所へ移管された。

白色矮星

太陽の0.46倍以上8倍以下の質量を持つ恒星は、星の進化の最後に、外周部が膨張し、星の重力を振り切って星間空間に流出してゆく。このとき残された星の中心部が白色矮星である。典型的な半径は太陽半径の100分の1程度で、その密度は水よりも100万倍程度高い。チャンドラセカール限界と呼ばれる質量の上限値(1.4太陽質量)があり、星の中心部がこれ以上重いと、中性子星になる。

波長

波の1周期分の長さ。周波数とは次の関係にある:(波長)×(周波数)=(光速度)。光速度は真空中で秒速約30万キロメートルである。

パラボラアンテナ

アンテナのうち、回転放物面(パラボロイド)を用いて電波を送受信するもの。回転放物面という性質から、平行な波面をほぼ1点に収束する。最近の電波天文学では、ほとんどがパラボラアンテナを用いて電波を受信する。回転放物面は、光学望遠鏡の反射鏡でも用いられており、パラボラアンテナの反射面のことを鏡面ということがある。

爆発的星形成(スターバースト)

銀河の中心付近(半径1000程度以内)で大量の星が短期間(1億年以下の時間スケール)に誕生する現象。星形成率は、1年当たり太陽数個分から1000個に及ぶものまでさまざまである。ミリ波やサブミリ波で観測される分子ガスは、爆発的星形成の原材料である。

ビーム

電波望遠鏡が電波を送受信できる空の範囲。単一の電波望遠鏡の場合、このビームのサイズが角度分解能に相当する。

非熱的放射

物体の熱運動以外の運動によって放射される電磁波のこと。電波では、磁場の周りを光速に近い電子がらせん運動することによって放出されるシンクロトロン放射と、メーザー放射が重要である。熱的放射よりも強い強度の電磁波を出す場合がある。

ブラックホール(銀河中心)

銀河中心に存在するブラックホールのまわりには、ガス円盤が形成され、高エネルギー現象が起こっている。その例が電波銀河やクェーサーである。

分光

電磁波を観測する場合,全ての周波数の成分が一体となってやって来る。それをスペクトルに分解して周波数ごとの強度分布を得ることを分光と言う。可視光ではプリズムによって分光することができる。また、虹は太陽の光を雨滴によって分光したものと言える。

分光器

電磁波を観測する場合,全ての周波数の成分が一体となってやって来る。それをスペクトルに分解して周波数(波長)ごとの強度分布を得る装置。可視光でのプリズムはその例。電波天文学ではさまざまな仕組みのものが存在するが、大別すると、アナログ分光器とデジタル分光器とがある。

VLA(the Very large Array)

米国国立電波天文台(National Radio Astronomy Observatory) のもつセンチメートル波を中心とする干渉計。27台のパラボラアンテナからなり、最大一辺が21キロメートルのY字型に配列される。現在、高性能化のための計画が進行しており、expanded VLA (EVLA) と呼ばれている。

VLBI(超長基線電波干渉法: Very Long Baseline Interferometry)

電波干渉法の一種。千キロメートル以上も離れたアンテナが受けた信号の処理(相関処理)を、実時間(リアルタイム)ではなく、観測の後に行う。信号を磁気テープなどの媒体に記録してから相関処理器に持ち寄る。角度分解能がアンテナ間の距離(基線長)に反比例して高くなることを利用して、1000分の1秒程度,あるいはそれより高い角度分解能を達成する。

VSOP (VLBI Space Observatory Programme)

電波天文衛星「はるか」を打ち上げることによって実現したスペースVLBI。1997年に打ち上げ、2005年まで運用された。「はるか」と地上アンテナとで相関処理と呼ばれる天体からの信号処理を行った。電波銀河や電波クエーサーなどの活動銀河核の構造の解明に力を発揮した。

VERA (VLBI Exploration of Radio Astronomy)

相対VLBIの手法によって、これまでより100倍高い精度で銀河系内にあるメーザー源の位置と運動をはかり、銀河系の3次元地図を作成するプロジェクト。水沢(岩手県)、小笠原、入来(鹿児島県)、石垣島の4局からなる。通常のVLBIでは、絶対位置の情報を失うが、相対VLBIでは遠方のクェーサーなどの位置を基準にすることができるため、絶対位置の情報を得ることができる。

ヘテロダイン受信機

受信機のうち、ミキサによる信号の周波数変換と増幅器による信号の増幅を行うもの。SIS受信機やHEMT受信機はこのタイプである。

分子雲

星間物質の密度が濃い場所を星間雲と言うが、そのうち、ガスが主として分子の状態にあるものを分子雲と言う。水素は2原子分子H2になっている。温度は極端に低く、典型的に10K程度である。星形成の現場である分子雲コアを含む。ミリ波やサブミリ波の天文学の重要な観測対象である。

分子雲コア

分子雲のうち、とくに密度の濃いところ。星形成の現場である。大きさは1光年程度、質量は数ー数十太陽質量程度である。分子雲コアの収縮によって星形成が起こる。ミリ波やサブミリ波の天文学の重要な観測対象である。

HEMT受信機

HEMTとは、高電子移動度トランジスタ(high electron mobility transistor)のことで、低雑音増幅器(アンプ)として利用される。パラボラアンテナで集光した信号をHEMTアンプを用いて増幅した後、 取り扱いやすい周波数に変換する。野辺山45メートル電波望遠鏡では、周波数が40GHz 以下の電波を観測する受信機はこのタイプである。

偏波(偏光)

多くの場合、電磁波の電界の振動の方向は、電磁波の進行方向に垂直な面内にランダムに分布する。しかし、場合によって偏りがある場合がある。これを偏波(偏光)という。直線偏波、円偏波、そしてその中間の楕円偏波がある。

星形成

星の誕生のこと。その過程は未解明の部分が多く、ミリ波やサブミリ波の天文学の重要な問題の一つである。

ホーン

宇宙からの電波をパラボラアンテナから受信機に受け渡す(給電する)ために使われる錐状の小さなアンテナ。

ボロメータ

受信機のうち、受信した電波のエネルギーを熱エネルギーに変換して測定するもの。いわば温度計である。周波数分解能は低いが、逆に,連続波の高感度観測には適している。

マイクロ波

電波のうち,波長が1メートル以下のもの。

マッピング

電波天文学で、広がった電波源の分布を観測によって画像として得ること。得られた画像をマップと呼ぶ。

マルチビーム受信機

パラボラアンテナの焦点面に複数の受信機を並列した受信機。同時に天球面上の近接した複数の方向を観測できる。

メーザー

星間空間では、2つのエネルギー準位間の粒子数の比が逆転して上の方が大きくなることがある。このとき、この空間を電磁波が入射されると、放射強度が増幅される。これがマイクロ波の場合はメーザーと呼ばれる。光の場合はレーザーである。メーザーの周波数のところでは、熱的放射の場合の強度を著しく超えるため、VLBIでの観測が可能である。系外銀河 NGC 4258 の中心で約1000キロメートル毎秒という高速のドップラー偏移を示す水メーザーが観測され、これをきっかけにVLBI観測が行われて中心に3600万太陽質量の超大質量ブラックホールが存在することが示された。

連続波スペクトル

電磁波を分光したスペクトルのうち、周波数に対して連続的に強度が変化するもの。可視光の場合は、白熱灯の光をプリズムで分光すると得られる。