国立天文台ALMA推進室研究員の樋口あや氏、野辺山宇宙電波観測所教授の川邊良平氏が率いる研究グループは、 若い星の集団(星団)がガスのかたまりの衝突によって生まれたという証拠を発見しました。 この研究は野辺山45m電波望遠鏡を用いて行われ、観測対象として若い星団14天体を選び出し、それぞれの星団の母体となる高密度ガスの領域の観測を行ってきました。
これらの領域はへび座やいっかくじゅう座など地球から1000-7000光年離れている場所で、赤外線の観測によって若い星団が生まれている場所だと分かってきています。 研究グループでは、星の材料である高い密度のガスを観測し、4つの天体でガスの衝突による星団形成の現場を発見しました。
これまでの研究で、宇宙に存在する多くの星が集団として生まれることが知られています。しかし、このような星団を一気に生むためには何らかの誘発原因が必要だと言われてきました。 これまでに、銀河の腕にガスが衝突して、最終的に星団が生まれるという証拠は見つかっていましたが、特に誘発原因がないような空間で密度の高いガス同士が衝突を起こして星団形成を誘発するという観測結果はありませんでした。 また、ガス同士の衝突によって小さな高密度ガスのかたまりが生まれ、それらが星へ成長するというシナリオは理論的には予測されていましたが、実際にそのような現場を発見したのは今回が初めてです。
研究チームは、現在建設中のALMA(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)を用いて、これまでの100倍以上の解像度で観測し、より詳しい描像を明らかにすることを考えています。
本研究は2010年8月発行の米国の天体物理学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル」に掲載されます。
A Mapping Survey of Dense Clumps Associated with Embedded Clusters II
: Can Clump-Clump Collisions Induce Stellar Clusters?
Higuchi, A.E., Kurono, Y., Saito, M., Kawabe, R. 2010, ApJ, 719, 1813-1827