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研究の背景
クエーサー:巨大ブラックホールの重力エネルギーで輝く、宇宙でもっとも明るい天体

クエーサーとは、銀河の中心に位置するコンパクトな天体(銀河核)のうち、可視光できわめて明るい銀河核を指し、宇宙で最も明るい天体種族のひとつに数えられます。クエーサーは、しばしば100〜120億年前の宇宙に見つかる非常にまれな天体 (10万個の銀河を探してようやく1個見つかる程度) です。このため、クエーサーの性質には依然として不明な点が多く存在しますが、その莫大な光度は、銀河核にひそむ巨大ブラックホールへ大量のガスが落ち込む際に解放される重力エネルギーに起因するということがわかっています。クエーサーがどのように形成されるかは未解明ですが、最近の研究から、ガスに富んだ複数の銀河同士の衝突合体によって、ガスがブラックホールに急激に供給されることによって生じるとする説が有力になっています。したがって、クエーサーが形成されつつある現場を見つけることができれば、巨大ブラックホールがどのようにして誕生するのか、を理解する鍵を得ることができるはずです。

モンスター銀河:爆発的に星を生む、ガスと塵に覆われた重い銀河

一方、モンスター銀河とは、全光度の9割以上を遠赤外線–サブミリ波で放射する銀河で、やはり 100〜120億年前の宇宙におおく見られる、最も明るい天体種族のひとつです。現在では、以下のシナリオが観測的に確実視されています。—— 複数の銀河の合体により爆発的星形成現象が引き起こされ、無数の大質量星により暖められたが遠赤外線からサブミリ波という波長帯で莫大なエネルギーを放射、ごく短期間に大量のガスを多数の恒星に変換して、現在の巨大銀河へと進化します。

原始銀河団と原始クエーサー

ここでのポイントは、上に挙げた2つの天体種族の形成において、複数の銀河の合体が深く関係している可能性が高い点にあります。銀河が衝突する頻度は、銀河の数密度に比例して高くなります。したがって、宇宙初期に見つかっている若い銀河の大集団(原始銀河団) の内部のような、銀河の個数密度が高い環境では、銀河どうしの相互作用や衝突現象が促進されることが期待されます。衝突を経験した銀河の内部では、衝突が引き起こす潮汐作用や衝撃によってガスが集められ、急激な星形成活動(爆発的星形成)が引き起こされます (モンスター銀河の出現)。同時に、大量のガスが巨大ブラックホールに引きずり込まれることで、巨大ブラックホールの急激な成長が生じる (原始クェーサー) というシナリオが成立します。

たいへん興味深いのは、こうした巨大ブラックホールの誕生が、原始銀河団という8桁以上もことなる大きさをもった広域的な構造と物理的に結びつくことが期待されるという点です。このように、大きさの異なるさまざまな天体がおたがいに関係しながら形成・進化することを、「宇宙の階層的構造形成」と呼び、現代の天体物理学における中心的な課題になっています。原始銀河団 (1億光年) と銀河核(巨大ブラックホール) (1光年未満) というまったく異なるスケールを関連づけるには、(1) 原始銀河団のなかにモンスター銀河はいるのか、(2) モンスター銀河の中心に原始クエーサーはいるのか(巨大ブラックホール成長が起こっているのか)、という2つの疑問を解かなければなりません。

問題は、巨大ブラックホールの成長が、爆発的星形成を伴った母銀河の大量のガスと暗黒星雲)に「隠されて」進行し、そしてやはりその母銀河(モンスター銀河)も暗黒星雲に隠されるという点です。理論的に予想される、こうしたクエーサーの前段階「原始クエーサー」の母銀河の特徴は、モンスター銀河のそれと酷似しています。そして、モンスター銀河は、サブミリ波で莫大なエネルギーを放出します。したがって、これらの疑問を解くカギは、サブミリ波によるモンスター銀河の探査です。

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