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観測成果
  
特異銀河SSA22-AzTEC1は「暗黒」モンスター銀河だった!

研究チームは、米国サブミリ波干渉計を用いたSSA22-AzTEC1の正確な位置測定に成功しました。すると、SSA22-AzTEC1が他の波長で撮影された画像に写っているかを確認することができます。この結果、(サブミリ波はもちろん)マイクロ波、赤外線で検出されました。これらはいずれも、濃いガス(暗黒星雲)を透過する電磁波です。とくに、サブミリ波と赤外線の画像では、モンスター銀河全体を覆う暗黒星雲(濃いガスと塵)からの熱放射が検出されています。これはこの銀河の内部で凄まじい勢いで星々が誕生していることを示す証拠です。

しかし、それと同時に世界屈指の高感度を誇るすばる望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡でさえも、可視光線でまったく検出されていないこともわかりました。すさまじい勢いで誕生した恒星は可視光線で見えるはずなのに、いったいどこへ行ったのでしょうか。詳細な分析の結果、SSA22-AzTEC1には質量にして太陽1000億個ほどの恒星が存在するにも関わらず、そのほとんどが分厚い暗黒星雲に包まれていることがわかりました。つまり、SSA22-AzTEC1は、銀河全体が暗黒星雲に包まれている「暗黒」なモンスター銀河だったのです。

観測結果
図1:原始クエーサーが発見されたモンスター銀河をさまざまな波長で見た画像。左から、超大型干渉計 VLA、アステ望遠鏡 (等高線:サブミリ波干渉計)、スピッツァー赤外線宇宙望遠鏡 160ミクロン、同 24ミクロン、同 8.0ミクロン、同 5.8ミクロン、同 4.5ミクロン、同 3.6ミクロン、すばる望遠鏡、ハッブル宇宙望遠鏡、GALEX宇宙望遠鏡。赤丸は、サブミリ波干渉計で測定した SSA22-AzTEC1の正確な位置を示します。左から2番目の図を見ると、アステ望遠鏡では雲のようにぼんやりとしか見えていなかったSSA22-AzTEC1の位置が、白い等高線で示したようにサブミリ波干渉計によって高い精度で決まったことがわかります。(© 2010 国立天文台)
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原始クエーサー最有力候補天体を発見!

研究チームは、サブミリ波干渉計で検出されたモンスター銀河の位置に、強いエックス線を放射する天体が存在することに気づきました。エックス線とはレントゲン撮影に使われる電磁波の一種で、物質を透過する能力が高いという性質を持ちます。したがって、エックス線観測望遠鏡を使うことで、暗黒星雲の内部を見通すことができます。そこで、SSA22-AzTEC1の位置に検出されたエックス線データの詳細な分析を行った結果、大量のガスによる吸収を受けながらも莫大なエネルギーを放射する天体が存在することがわかりました。その天体が放射する全エネルギーは、太陽の2兆倍に達し、そのエネルギー発生機構を自然に説明できるのは巨大ブラックホールの急激な成長だけです。このことから、このモンスター銀河は巨大ブラックホールの揺りかご、原始クエーサーである可能性がきわめて高いことがわかりました。

観測結果
図2:原始クエーサーが発見されたモンスター銀河の周囲のすばる望遠鏡による可視光画像(左)、米国サブミリ波干渉計によるサブミリ波画像(右上)、およびチャンドラX線天文衛星によるX線画像(右下)。サブミリ波干渉計は、モンスター銀河全体を覆う暗黒星雲(濃いガスと塵)からの熱放射を検出しています。これはこの銀河の内部で凄まじい勢いで星々が誕生していることを示す証拠です。その一方で、すばる望遠鏡では対応する天体が検出されておらず、暗黒星雲に包まれた特異な銀河であることがわかります。X線画像では、巨大ブラックホールがガスを吸い込んで成長している証拠となるX線放射が明確に検出されています。 (© 2010 国立天文台) [画像提供:Suprime-Cam SSA22 Survey team (左図), Chandra Deep Protocluster Survey team (右下)]
発見の意義

本研究の意義としてまず挙げたいのが、観測的にきわめて希少である原始銀河団中の原始クエーサー候補天体を同定した点です。原始クエーサーの希少性は、(1) その期間 (寿命) が銀河の年齢に比べていちじるしく短いはずであるという、本来の性質に起因する理由、(2) 暗黒星雲に覆われているためそもそも発見がむずかしいという、観測技術的な理由の一方ないし両方によると考えられます。事実、原始銀河団のような銀河の過密な環境で見つかった原始クエーサー候補天体は、これが最初の例です。今回の発見は、原始銀河団−大質量銀河−巨大ブラックホールの形成の相互関係を観測的・理論的に理解するための、絶好の観測対象、言わばひとつの「実験場」を提供するはずです。

もうひとつの意義は、「隠された」星形成銀河とも言うべき銀河を同定したという点です。本天体のように、世界最先端のすばる望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡をもってしても可視光が検出されない、しかしサブミリ波できわめて明るい銀河の同定は、世界で2例目です。この事実は、科学運用が目前にせまる アルマ望遠鏡 で、少なくない数の隠された星形成銀河が遠方宇宙に発見されることを予感させます。

本研究成果は、12月1日発行の米国の天体物理学専門誌『アストロフィジカル・ジャーナル』に掲載される予定です。また、11月12日付けで同誌オンライン版に先行発表されました。

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