サイト内の現在位置

NEWS

激しい活動性を示す銀河の中心部の分子組成を調査

C2Hと環状C3H2の初検出!

 現在、45 m 電波望遠鏡のプロジェクトのひとつとして、種々の特徴的な天体に対する「ラインサーベイプロジェクト」が行われています。「ラインサーベイ」とは、広い周波数範囲に対して分光観測を行い、多くの様々な分子スペクトルを受信することで、その天体の分子組成や、温度や運動などの物理的な特徴を総合的に調べることができる重要な研究手法です。
 今回、野辺山宇宙電波観測所と東京大学からなる研究グループは、地球からおよそ 4,700 万光年離れた場所にある「NGC 1068(M 77)」という銀河のラインサーベイ観測を実施しました。この天体は、中心部の超巨大ブラックホールがエネルギー源と考えられる「活動銀河核(AGN ; Active Galactic Nucleus)」を持ち、非常に高いエネルギー放射を行っている銀河として知られていますが、このような AGN を持つ銀河がどのような分子組成になっていて、物理的にどのような特徴を持っているのかは、これまでよく分かっていませんでした。
 研究グループは、野辺山宇宙電波観測所と大阪府立大学の共同で開発された新たな受信機を用いて、NGC 1068 に対する 85.1~98.4 GHz の広い周波数範囲に渡る観測を行ったところ、エチニルラジカル(C2H)、シクロプロペニリデン(環状 C3H2)、シアン化水素の同位体(H13CN)などの受信に成功しました。このような基本的な炭素鎖分子や、炭素を含む環状の分子は、私たちの銀河系内の星形成領域などでは検出されています。しかし、活動銀河核で検出され、その物理状態を解析した例は、これまでほとんどありません。
 今回は、それらの分子の存在量や、物理状態を比較するために、重い星が大量に形成されている典型的な銀河 NGC 253 の観測も行ったところ、C2H や 環状 C3H2 の存在量については、二つの銀河で大きな差は見られませんでした。これは、このような炭素を含む分子が AGN の影響を受けにくいか、あるいは AGN からやや離れた場所にある冷たい分子ガスの中に、より多く含まれていることを示唆しています。
 本研究の成果は、Astrophysical Journal Letters 誌に掲載予定です。
(研究グル―プ;中島 拓、高野 秀路、河野 孝太郎、井上 裕文)
図:NGC 1068 の中心部で検出された C2H(上図左側)と 環状 C3H2(上図右側)の分子スペクトルの図。図の縦軸は、観測された電波強度を温度に換算したもの(単位は絶対温度;ミリケルビン)、横軸は観測した分子ガスの運動速度(単位は km/s)を表している。C2H は、超微細構造によりスペクトルが 6 本観測されるが、個々のスペクトルの幅が大きいので、大きく二つに分かれて見える。