タイトル

「野辺山45m望遠鏡、アステ望遠鏡により、誘発的星形成の解明の手がかりを発見」

発表者

島尻芳人(国立天文台 野辺山宇宙電波観測所)

発表日時

2011年2月25日(金) 4時(日本時間)

記事解禁日時

発表と同時 *同日朝刊掲載可

概要

国立天文台野辺山宇宙電波観測所の島尻芳人研究員、川辺良平教授等を中心とする国際研究チームは、質量の大きい星(大質量星)から放出された紫外線などがオリオン座分子雲における星形成を誘発している可能性があることを発見しました。 オリオン座分子雲は地球から1300光年ほどの場所にあり、多くの星が今現在生まれている場所として有名です。研究チームはこの場所に対して、野辺山45m電波望遠鏡および南米チリにあるアステ望遠鏡を用いて、これまでにない広い領域の観測を行ないました。この観測により、星が生まれるもととなるガスの塊(分子雲コア)と周辺環境との関係を詳細に調べることで、大質量星から放出された紫外線などがオリオン座分子雲内での星形成を誘発(誘発的星形成)している可能性があることが分かりました。 誘発的星形成は超新星爆発、大質量星からの紫外線、双極分子流(注1)などが周辺のガスの塊(分子雲、分子雲コア)と衝突することで、星形成を誘発・促進するメカニズムと考えられています。この誘発的星形成は大質量星の形成、星団形成(注2)といった様々な星形成の形態に関連していると考えられているので、誘発的星形成は星形成のメカニズムを知る上で非常に重要な過程だと言えます。研究チームは、現在、南米チリに建設中のアタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA)を用いて、より詳細な描像を得ることを計画しています。

(注1)星が生まれる際に、ガスが高速で極方向に放出される現象

(注2)狭い領域に星が集団的に生まれる形成メカニズム。宇宙にある大部分の星はこのメカニズムで生まれると考えられています。



(左図)オリオン座分子雲の中間赤外線(2MASS)のイメージ画像。既に生まれている星の分布を調べる事が出来る。 (c)2MASSプロジェクト

(右図)野辺山45m電波望遠鏡によって取得された一酸化炭素分子のイメージ画像。このイメージ画像を詳細に解析することで、星を作る材料である分子ガスの分布や運動を調べることが出来る。 (提供)国立天文台