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衝突する銀河の分子ガスの分布を明らかに

満天の星空を見上げたことがありますか?写真や実際に見たことがある方の中には、あんなに星があるのだから、きっとぶつかることもあるだろう、と思ったこともあるかもしれません。しかし、星と星がぶつかることはめったにありません。それに対して、星が100億個も集まってできている銀河同士は良くぶつかることが知られています。衝突の間では、お互いが強い重力によって影響を及ぼしあうため(相互作用銀河、と呼ばれています)、銀河の形や運動は大きく乱されてしまいます。面白いことに、相互作用銀河には衝突が進んでいくのにつれて、活発に新しい星を作り出していくという特徴があります。このような性質は1980年代から知られていて多くの研究者たちが研究してきていますが、まだどうして星がたくさん生まれるのかその原因は突き止められていません。相互作用銀河は遠い所にあることが多く、観測に時間がかかるのです。

筑波大学の金子紘之氏らの研究グループでは野辺山45m電波望遠鏡とマルチビーム受信機BEARSを用いて、4つの相互作用銀河の一酸化炭素分子から出る電波を効率よく観測して分子ガスの分布を明らかにしました。分子ガスは銀河の中心から大きく離れたところに集まっていたり、星よりも広がって分布していることがわかりました。シミュレーションやもっと衝突の進んだ相互作用銀河の観測では分子ガスは銀河の中心に集まるといわれており、今回の結果から分子ガスは単純に銀河の中心へと落ちていくのではないことが明らかになりました。

参考文献: Kaneko et al. (2013) PASJ 65, 20 

図: 各図左側がスローン・デジタル・サーベイ(SDSS)で撮られた写真(星の分布)。 右側が、この観測で得られた一酸化炭素ガスの分布で、SDSS写真の赤枠内の領域 を観測しています。一酸化炭素ガスから出る電波の強さは分子ガスの量を測るためによく使われます。
左上: Arp 84(NGC 5394 & NGC 5395)、右上: VV 219(NGC 4567 & NGC 4568)、
左下: VV 254(UGC 12914 & UGC 12915)、右下: アンテナ銀河 (NGC 4038 & NGC 4039)