サイト内の現在位置

NEWS

スターバースト銀河M82の銀河風での分子ガス

分子雲は新たな星々を生み出すもととなっています。そこで生まれた大質量星は恒星風を放出し、さらに数百万年後には超新星として爆発します。これらによって放出されたガスやダストなどの物質は、また新たな星を形成する材料として供給されることとなります。これらの過程は、多くの銀河で観測されています。しかし、いくつかのスターバーストと呼ばれる銀河では、活発な星形成に伴う分子ガスの急激な消費を伴いつつ、銀河風という現象が起きています。数百万年という短い期間に若い星からの恒星風や超新星爆発が頻繁に起こるこのような銀河の中心では、星間ガスやダストは、加熱され、また、明るい星団からの放射圧によって膨張し、ついにはアウトフローとして銀河から流出されます。このように星間ガスの多くが吹き出されるのであれば、星形成のもととなる材料が不足することとなります。すなわち、銀河風は銀河の進化で非常に重要である星形成を抑制する役割を果たすことになりうるのです。

M82はそのような近傍のスターバースト銀河のひとつです。1960年代から高エネルギーガスが銀河中心から流れ出していることや、隣のM81銀河と相互作用をしていることで有名な天体です。Salakをはじめとする筑波大学の研究チームは、分子ガスのアウトフローの特徴を明らかにするために、野辺山45m電波望遠鏡でM82にある分子ガスのマッピング観測を行いました。ここでの分子ガスの観測とは、CO(一酸化炭素)分子から放出される電波の強度を測定するということです。その結果、太陽の約10億倍に相当する質量の分子ガスが、毎秒200 キロの速度で銀河から6000光年も放出されていることがわかりました。このアウトフローは、M82の中心領域における超新星爆発のエネルギーによって起きていると考えられます。

参考文献: Salak et al. (2013) PASJ 65, 66 

図: M82の可視光(Hα)画像に重ねたCO輝線強度(分子ガス分布)のコントアマップ。分子ガスのアウトフローを矢印で示しています。(可視画像:Mutchler et al. 2007, PASP, 119, 1; The Hubble Heritage Team)