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低質量星形成に伴う衝撃波領域 L1157 B1 の化学組成

衝撃波は、星形成領域、銀河中心、超新星周辺など宇宙の至る所に存在しているため、衝撃波領域の化学を明らかにすることは宇宙での物質進化を知る上で重要です。この目的のため、野辺山ラインサーベイグループは、2007-12 年の期間におこなわれた 45 m 電波望遠鏡ラインサーベイプロジェクトの一環として、ケフェウス座の低質量星形成領域 L1157 mm 周辺の衝撃波領域、L1157 B1 の観測を行いました。その結果、29 種類の分子の130 本のスペクトルを検出しました。その中には酸素を含む複雑な有機分子である HCOOH、CH3CHO、HCOOCH3、リンを含む分子の PN などが含まれ、CH3CHOと PN はこの天体で初検出です。衝撃波領域の化学モデル計算の結果、複雑な有機分子は主に星間塵上で生成され衝撃波によって気相中に蒸発したものが検出された可能性が高いことがわかりました。一方、PN は、星間塵上に存在している PH3 という分子が衝撃波により星間塵表面から蒸発し、脱水素反応などを経て気相中で生成すると考えられます。このように私たちの観測により、L1157 B1 には星間塵上で生成した分子、気相中で生成した分子のそれぞれが存在することが明らかになり、衝撃波領域の化学の解明に向けて大きな成果を残しました。

参考文献: Sugimura et al. (2011) PASJ 63, 459、Yamaguchi et al. (2011) PASJ 63, L37、 Yamaguchi et al. (2012) PASJ 64, 105 

図: 衝撃波領域 L1157 B1 での広い周波数領域にわたるスペクトル(縦軸は電波の強さを示しています)