野辺山宇宙電波観測所新所長就任のお知らせ
国立天文台野辺山宇宙電波観測所(長野県南牧村)の 立松 健一 現所長が2024年9月30日をもって任期満了することに伴い、次期所長が以下の通り就任しますのでお知らせします。
西村淳 (現 国立天文台 野辺山宇宙電波観測所 准教授)
任期:2024年10月1日〜2026年9月30日(2年)
就任の挨拶 このたび、野辺山宇宙電波観測所長に就任することになりました西村淳です。野辺山宇宙電波観測所ではこれまで立松健一前所長のリーダーシップのもと、事業の選択と集中を進めてまいりました。そんな観測所を応援しようと市民の皆さんや近隣自治体からは多大なご支援を受け賜わっており、その力は今では観測所維持の重要な一角となっておりますこと、この場を借りて厚く御礼申し上げます。 さて、私は現場人間でして、学生の頃から足繁く野辺山に通っては電波望遠鏡を仲間と一緒に作ったり、そのオリジナルの電波望遠鏡を使って宇宙の冷たく暗い部分を人類が未だ見たことが無い精細さで調べたりしてきました。一方で、昨今の科学技術の高度化は天文学領域にも押し寄せており、専門化と細分化が急速に進んでおります。 |
私のように現場でゼロから経験しながら最終的な科学成果を生み出す、いわゆるジェネラリスト天文学者は、20年前にはありふれた存在でしたが最近では非常に稀有となってしまいました。私はたまたまそのようなキャリアを歩んできたことから、今回、その経験を活かす形で歴代最年少ながら所長という重責を担わせていただくこととなりました。この事は、日本の天文学業界が、現在、深刻な人材不足に陥っていることを端的に示しており、非常に危惧しております。
野辺山宇宙電波観測所は国立天文台の有する国内最大の観測装置拠点であります。ここでは、世界最大級の大きさの45mミリ波電波望遠鏡に、世界最高性能の高効率受信機が搭載され、特に、ミリ波の広視野観測分野において世界第一線の観測成果を挙げ続けています。さらに、45mミリ波電波望遠鏡を技術開発用途で大学に利用してもらう「開発プログラム受入制度」を開始することで、野心的な将来の高性能装置の開発が活発化されたとともに、野辺山を訪れ現場を経験する学生さんの数が増えてきました。現在は、45mミリ波電波望遠鏡を利用するには、経費の一部を利用者が負担する有料制となっておりますが、その結果、予想に反して利用者の層が広がっています。これまで電波観測をしたことがなかった他領域の天文学者や、高校理科部による観測体験会が開かれるようになりました。また、観測所の広報業務縮小を受けて始まった長野県南牧村との協定では、観測所を天文観光資源と捉えた有償事業を実施いただいておりますが、予想外に好評で、年間4000人を超える人々に観測所内での特別なイベントを楽しんでもらうことができています。このような需要には観測所の従来の広報業務の枠組みでは応える事ができませんでした。
野辺山宇宙電波観測所は、今後も、時代の変化に合わせて事業内容を修正しつつ、観測所の価値をより多くの人によりたくさん享受してもらえるよう、努めてまいります。そのためには応援してくださる方や、外部のパートナーの協力が不可欠です。今後もより多くの人に関心を持っていただき、より多くの人と協同させていただきたいと思っております。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
2024年10月1日
西村淳
(所長・45mミリ波電波望遠鏡科学運用マネージャー・広報マネージャー)