野辺山ミリ波干渉計でオリオン星雲を探る
ーみえてきた星々の誕生の仕組み —
2010年03月24日
誕生したばかりの星(以下、原始星)は非常に速いスピードのガスを噴き出すことが知られています。 この噴き出されたガスが周辺の星形成に与える影響を明らかにすることは、星形成の研究の重要な課題の1つだと考えられています。
東京大学、国立天文台、台湾中央研究院の研究チーム(リーダー:島尻芳人(東京大学大学院))は、 国立天文台野辺山宇宙電波観測所のミリ波干渉計を用いてオリオン星雲にある原始星とその周辺を観測しました。 ミリ波干渉計は、高い解像度で一酸化炭素分子(注1)が放つ電波や電波連続波(注2)などを観測でき、原始星周辺のガスやチリの構造をくわしく調べる事ができます。 観測の結果、原始星から噴き出されたガスの先端には、星を生む元となる密度の高いチリのかたまりが複数あることが今回初めて明らかになりました。 さらに、研究チームはミリ波干渉計を用いた一酸化ケイ素分子(注3)の観測により、原始星から噴き出したガスがこのチリのかたまりと衝突していることを発見しました。 これらの観測結果は、オリオン座にある原始星から噴き出されたガスが、周辺の星形成を誘発している可能性があることを示しています。
このように連鎖的に星が誕生している現場は、過去の電波の観測では細かい構造を検出することが難しかったため、世界でも数例(内2例は同チームの観測結果)しか発見されていません。 しかし、最近は干渉計技術などを使う事によって、より細かい構造の観測が可能になってきています。
- (注1)原始星から高速に噴き出すガスに多く存在する分子
- (注2)主に宇宙空間にただようチリから放たれる電波
- (注3) 原始星から高速に噴き出されたガスがチリと衝突することで、この分子がチリから蒸発して宇宙空間に放出されると考えられている
観測結果は、Publications of the Astronomical Society of Japan (PASJ)に掲載されています。PASJ, Vol. 61, No. 5, pp. 1055.