NMAフラックスリダクション

超簡易マニュアル


通常のSynthesis観測とは異なり、フラックス観測データの解析には 専用のツールを利用します。ここでは、フラックスリダクション プログラムの構造と利用法について簡単に紹介します。

1. フラックスリダクションプログラムの構造と概要

NMAで行ったフラックス観測のデータを処理する際には、 UVPROC2とは異なるフラックスリダクション専用の一群の コマンドを用います。 これらは全てコマンドラインから起動・実行します。 データ処理のおおよその流れと使用するコマンド名 ([ ]内に示します)は以下のとおり。
  1. 生データ(BINARY形式)を生成する[コマンド:mrg_offline.tcl]
    利用法はsynthesis観測の生データ生成の場合と全く同じです (→ step-by-stepガイド)。 FITSファイルの代りにBINARYファイル(.BINという修飾子が付く)が生成されます
  2. Tsysファイルを生成する[tsys または tsys2]
    廬さん作成のマニュアルを参照のこと。 データを平均する間隔は30秒にして下さい
  3. Tsys補正を行う[tsyscorr]
  4. 観測の情報を確認し[finfo]、生データの様子を眺める[disp, disp2, disp3]
  5. 4.を参考に必要であればデータのフラッギングを行う[flag]
  6. データのS/N比や位相揺らぎの様子を吟味する[disp3]
  7. 6.を参考に、必要であれば適当なS/Nを得られるまでデータの アベレージングを行う[average]
  8. アンテナ毎のゲイン差を補正する[gaincorr]
  9. データをフィットする[fit4]
  10. 得られたアンプリチュードからフラックスを計算する
  11. 結果を報告する

2. リダクションプログラムの使い方

フラックスリダクションの実行、すなわち各プログラムの実行は WS上で各自のリダクションアカウントで行います。 各プログラムの実行ファイルは /home/nmaobs/nma/bin の下に ありますので、まずはじめにpathを通しておく必要があります。
2000-2001期観測シーズン以降。1999-2000シーズン以前とは 異なるので注意してください

すべてのプログラムが対話的に処理を進めていきます。 端末上に出てくるメッセージを読めばほとんどの操作が 問題なく進められるはずです。

3. リダクションのヒント

アベレージングの目安

S/Nの低いデータをscalar平均すると、正しいamplitudeは得られません。 例えば位相揺らぎが全く無く熱雑音が正規分布をする場合に、 S/N=1,2,3,5のデータをscalar平均すると、得られるamplitudeは 真の値よりも55,14,6,2%大きくなります。 したがって、このようなbiasを避けるためにscalar平均を行う前に データをvector平均してS/Nを上げなければなりません。 実際にはdisp3こまんどで4秒値データのS/N比を見積った上で、 最低でもS/N=3-5になるところまではvector平均してください。
一方、位相揺らぎを含むデータを位相揺らぎのタイムスケールよりも 長い時間でベクトル平均すると、coherence lossのためにamplitudeは 低めに出ます。例えば位相揺らぎが標準偏差σθ の正規分布 をする場合、vector平均で得られるamplitudeの期待値は、真の値に 対してexp(-σθ2)の割合になります (例えばσθ=30°ならば真の値の87%)。 したがって、vector平均はcoherence lossを抑えるために 必要最小限の長さにとどめるべきです (すなわち極力平均しないに越したことはない)。
「S/Nはできるだけ高く、しかしベクトル平均は短く」という上記の 要請から、キャリブレータはできるだけ明るいものを選び、フラックス 観測は大気透過率と受信機のよい周波数で行うことが推奨されます。 (例えば観測バンドはUWBCのUSB側であっても、フラックス の測定にはLSB側のデータを用いるなど)

惑星のフラックス

半径 r [arcsec]、温度 T [K]の黒体円盤が周波数ν[GHz]で放射する 輻射のフラックス密度Sν[Jy] は、

で計算できます。 (Rayleigh-Jeans近似。ミリ波で100K以上の惑星ならば成立)
惑星の温度にはいくつかの測定値が報告されています。 例えば、Griffin & Orton (1993, Icarus, 105, 537)は0.35-3.3mmの 範囲でのUranus、Neptuneの輝度温度の経験式を与えています (fit4の内部ではこの経験式を使用しています)。 また、Epstein et al. (1983, Icaurs, 56, 465)は3.5mmでのMarsの 輝度温度がMarsの自転(どの面が地球に向いているか?)に伴って 約±10 K変化することを報告しています。 もちろん、Marsの場合には公転にともなって日心距離が変化する ために生じる同程度の長周期変動も無視できません (Ulich 1981, AJ, 86, 1619)。 なお、Marsの日心距離や表面の中央子午線経度も HORIZONS で調べることが可能です(が、ちょっと面倒)。

4. リダクション結果の報告

どのcalibratorがいつ測定されているかを迅速に把握しflux観測の 効率化を図るため、flux観測を行った方はただちに NMA運用グループの担当者(中西、NRO本館206号室)までメール (nakanisi@nro.nao.ac.jp) または直接口頭で報告をお願いします。

報告の様式は、

時間的な余裕がなくリダクションが終了していない場合でも、 flux観測の指示書名(t0301.0100など)と観測した天体名、 および観測の質(天候状況等、簡単で結構です)だけで結構ですので、 運用マネージャまでお知らせ下さい。 現在flux観測の結果はExcelのファイルとして記録し、 Windows-NT上で 公開するようにしています→ NMAフラックス情報のページ


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Updated on: Monday, 24-Jan-2005 04:47:50 JST
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