AIPS/UVPROC2を用いたデータ処理の手引き

STEP 2: UVPROC2によるデータの表示と確認


AIPSへのデータのロードが終わったら、UVPROC2の表示機能を 使ってデータを眺めてみます。データの質は ここでだいたい判断できますし、また、 強いline(あるいはcontinuum)を観測している場合は、 この段階でもう見えているはずです。

しばらくはUVPROC2のみを使いますので、AIPSのwindowは アイコン化しておいて構いません。

  1. bandpass天体の表示(時間方向)

    まずは、もっともS/Nがよい、bandpass calibration用天体の データを眺めてみます。

    まず、UVPROC2 main menuのうち、[CRT display]というボタンを 押します。


    CRT display初期画面

    input fileというところに、表示させたいデータ名を入力します。 3つfile指定できるのは、3つのデータを重ねて表示できるからですが、 とりあえず1つ、bandpassのデータを見てみましょう。

    ファイルを指定するには、ファイラーを使います。
    MEMO: UVPROC2 filerの使い方

    左上、1: uidという表示の右に、1という数字があります。 この1という数字の右側をマウスでクリックし、上三角印が 出た状態にします(上図)。 この状態で Return key を押すと、次のようなwindowが出てきます。 これがfilerです。


    UVPROC2 file

    このfiler windowで、表示させたいfileをマウスでつつくと、 ハイライトされて、CRT displayのwindowにファイルが 示されます。


    filerにより、fileを指定した状態

    もちろん、直接、ファイル名を指定しても構いません (たとえば、この例であれば、nameにD1BPC、CLASSはUVDATA、seqは1とします)。

    x_axisは、何を表示するか(時間方向のplotをみるか、 channel方向のplotをみるか)を決めます。まずは時間方向の変化を 見てみます(このとき、周波数方向には、積分をかけます)。 また、integraは、without_flagged_dataにします。 さらに、channelを4から125とします(UWBC-1024MHzモードの 場合、分光器の両端2,3 channelにスプリアスが入ることが ありますので、そこは除いてデータを積分した上、表示します。 もちろん、逆にいえば、あるチャンネルだけの時間変化を 表示させることもできる、ということです。)。

    以上の設定は、今後頻繁に使いますので、パラメーターを saveしておくと便利です。一番下のsave file nameというfield に適当な名前を入れ、[SAVE]ボタンを押すとパラメーターが saveされます。load file nameでinitialを選ぶと 初期画面に、またsaveした名前を選ぶと saveした通りのパラメーターに戻るはずです。

    さて、ではデータを表示させてみましょう。[DISP]ボタンを押します。


    CRT displayでみた、bandpassデータの時間方向のplot。周波数方向には 積分している。

    左上から、A-B、A-C、A-D、・・・というアンテナの組み合わせにおける visibility(上段が振幅、下段が位相)が順に表示されています。 横軸は時間(この例では8時から9時)です。 振幅は最大値でnormalizeし、0から1.2まで、また位相は -180度から+180度です。

    ここで表示されているのは、NMA6素子15相関のうちの、10相関です。 残りの5相関を表示させるには、プロット画面上で、マウスの中ボタンを 押します。


    残り5相関分の表示

    この画面でもう1度マウス中ボタンを押すと、最初の(1ページ目の) 画面に戻ります。 右ボタンを押すと、display画面が終了します。 また、[PRINT]ボタンを押すと、このプロットが(1ページ目・2ページ目ともに) プリントされます。

    MEMO: 干渉計データの「質」の読み方入門

    ここで表示されているのは、各ベースライン毎のvisibility (振幅および位相)の時間変化です。これを見ると、いくつかの ベースラインで、 振幅および位相がふらふらと揺れている様子がみてとれます。

    たとえばA-Fというベースラインでは、特にデータの最初の時間帯で、 位相が2piの間でばたばたと 揺れています。一方、C-Dというベースラインを見ると、位相・振幅とも、 多少のゆらぎはあるものの、ほとんど一定と考えてよい安定性を 見せています。この違いは、実はベースライン長の違いを反映しています。

    この観測でのアンテナ配列は D配列 と呼ばれ、もっともコンパクトな配列ですが、その中でも短いベースラインから 長いベースラインまで、いろいろ含まれています。 これを見ると、C-Dというベースラインは短く(アンテナ間の距離13m)、 A-Fは長い(距離が約80m)ことがわかります。

    大気の揺らぎの変動スケールよりもベースライン長が十分短ければ、 そのアンテナペアでは、大気による位相変動の影響を受けず、 位相は基本的に安定します。一方、大気の変動スケールよりも 長いベースラインでは、一方のアンテナともう一方のアンテナとで 異なる大気変動を見ていることになり、位相は大気の擾乱の影響を まともに受けてしまいます。

    言うまでもなく、干渉計において、 位相は電波源の位置の情報をもたらしますので、 位相揺らぎは、高分解能観測をウリとする干渉計の「最大の敵」という ことになります。

    問題は、「どの程度の位相揺らぎまで許せるか?」ということですが、 おおざっぱには「位相ゆらぎのrmsが1 radian以下」あるいは 「peak to peakで180度以内」を目安として下さい (これは少々甘い基準です)。この問題についての詳しい議論は、 また場所をあらためて説明します(予定)。 ともあれ、今回例として扱うこのデータに当てはめてみると、 長いベースラインでは位相が180度以上揺れていて、あまり 質の良いデータとは言えないことがわかります。もし、余りに ひどいデータ(あるいは何かトラブルが起きているデータ)が 含まれている場合は、そのデータをあらかじめ 取り除く(flagging)必要がありますが、このケースでは とりあえず全部使って処理をしてみることにします。

  2. bandpass天体の表示(周波数方向)

    さて、次に、bandpass天体の、チャンネル方向(周波数方向)の プロットを見てみましょう。それには、さきほどのCRT display画面で、 x_axisをchannelにしてから[DISP]を押します。


    bandpass天体のデータの、周波数方向のプロット。時間方向には積分されている。

    左上からA-B, A-C, A-Dの順にvisibilityが表示されているのは 先ほどと一緒ですが、今度は横軸がchannel(周波数)になっているのが 違います(時間方向には、積分をしています)。マウスの中ボタンを 押すことにより、残りの5相関分を見ることができるのは先ほどと 全く同じです。

    さて、これを見ると、各ベースラインとも、非常に高いS/Nで、 振幅および位相が測定されていることがわかります。 3C273というquasarのcontinuumは、1GHzというバンド幅の中では ほとんどflatと見なせるので、この結果は「システムの周波数特性」 を表している、ということになります。この結果を使って システムの周波数特性を補正するのが、いわゆる「bandpass calibration」 です。あとで、このデータを使って、補正用テーブルの作成を行います。

  3. reference calibratorの表示

    次に、reference calibratorのデータを見てみます。 先ほどみたbandpass calibratorは、システムの周波数特性を 補正するための観測でしたが、今度(reference calibrator)は システム特性の時間変動を 追い掛けるための観測データです。

    再びCRT displayの画面で、 今度は、nameにD1REFを指定します。classやseqは先ほどと共通なので そのままでOK。時間方向の変化を見るために、x_axisはtimeに戻します。


    reference calibratorのプロット(時間方向)

    これを見ると、位相が時間方向にドリフトしている相関があったり、 振幅が突然低下している時間があったり、また、特に 9時過ぎあたりから、長いベースラインで位相ゆらぎが顕著に なってきたりと、いろいろ問題は ありそうです。が、ともあれ、全観測時間にわたって、ほとんどの ベースラインで位相と振幅がまずまずのS/Nできまっていますので、 データ処理を行うことができることはわかります。

    このデータには、ある補正を施したり、また質の悪いデータを 取り除くという作業も必要になりますが、これは次のステップ (calibrationを実行する段階)で説明します(まずはデータの質を 概観するのみにとどめます)。

  4. 目的天体の表示

    最後に、目的天体のデータをざっと眺めてみましょう。 普通、観測天体は非常に弱いので、なかなか生データの段階では 受かっているかどうか直ちにはわかりませんが、 ある程度の強さを持ったlineやcontinuumであれば、 確認することは可能です。

    CRT displayの画面で、nameをD1OBJとし、x_axisをtimeでまず時間方向の プロットを見てみます。


    目的天体のプロット(時間方向)

    これまで見てきたbandpass calibrator (3C273, 約20 Jy)や reference calibrator (0954+556, 約0.8 Jy)は非常に強いので、 visibility 1点(積分時間16秒に相当)ごとにある程度のS/Nで 位相が決まっていますが、目的天体の方は、さすがに弱いので、 時間方向に積分してみないと何も見えません(位相が2piの間で ランダムに分布している状態)。

    ちなみに、B-E基線で、ある時間、振幅が盛り上がっていますが、 これは、Eがらみの基線(E-A, E-B, E-C, ... E-Fという基線のこと)で 時々見られる「スプリアス」の影響です。このスプリアスは、 UWBCの1024MHzモードの場合、64-66チャンネルの範囲で、時々 現れることが知られています。ためしに、積分するチャンネル範囲を、 たとえば30-50として(64-66を除いて)プロットし、「振幅のもりあがり」 が消えることを確認してみて下さい。


    30チャンネルから50チャンネルの範囲を積分して時間方向の変化をプロット


    その結果(E-*のもりあがりが消えている)

    次に、目的天体のデータを時間方向に積分し、周波数方向のプロットを 見てみます。x_axisを再びchannelにして[DISP]ボタンを押します。


    目的天体のプロット(周波数方向)

    これを見ると、いくつかの基線では、信号が検出されているのが 実はわかります。たとえば、A-B基線のデータを見ると、 バンド内で、位相がある範囲内に収まっている(位相が決まっている、 という状態)います。さらに、90チャンネルから110チャンネルの 範囲で、振幅も(回りと比較して)盛り上がっているように見えます。 実は、これは「弱い連続波の上にlineが乗っている」という状況を 示しています。長いベースラインでは、構造が分解されていくため、 なかなかはっきりとは位相が決まりませんが、それでも A-C, A-D, A-E, B-Cなどの90 - 110チャンネル付近で 位相が決まっており、信号が受かっていることが伺われます。 なお、B-E基線の中心チャンネルに見えている「突起」は 前述のスプリアスです。

以上、取得したデータ(bandpass calibrator、reference calibrator、目的天体) をひとおおり眺め、データの質を概観し、「まずまず使えそう」という ことを確認することができました。これでSTEP 2は終り。 いよいよUVPROC2によるcalibrationを始めます。


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Updated on: Friday, 09-Dec-2005 20:08:33 JST