「太陽と宇宙天気予報と」堀 久仁子(国立天文台)

要旨

 みなさんは「宇宙天気」という言葉をご存知でしょうか?人口衛星やスペースシャトルが飛び交う宇宙空間は静かな世界のように思えますが、実は太陽活動が主なひき金になって刻々と変化しています。

 たとえば、太陽の自転に伴いコロナホール(太陽コロナ中のプラズマ[=電離ガス]の噴き出し口)が地球方向を向くと、地球は太陽起源の高速プラズマ流を横切ることになります。また、太陽面で爆発現象が起き、高エネルギー粒子や巨大なプラズマの塊が地球に向かって飛んでくることがあります。地球は自分で作った磁場の巨大なバリア(磁気圏)にすっぽり包まれているので、地上で生活する私たちが危険な粒子やプラズマの影響を直接受けることはありません。しかし、上空の大気の層が乱された結果、通信に障害が生じたり、人工衛星が使用できなくなったりするのです。

 このような「宇宙天気」の影響は、宇宙空間で活動する宇宙飛行士はもちろん、オーロラが見えるような高緯度地方に住む人々にとってはもっとシビアになります。一方、太陽活動と地球磁気圏の状態を常に監視することで、「宇宙天気」をある程度予想できます。

 講演では太陽活動と「宇宙天気」の関係、「宇宙天気」を予報する世界の取り組みを紹介します。