我々の銀河の星の90％以上はクラスター形成によって生まれる(Lada et al. 1991)。そのため星形成を理解するうえでクラスター形成を理解することは非 常に重要である。にも関わらず、クラスター形成を引起す外的要因とそのメカ ニズムが明らかになっていなかった。

そこで我々はこの外的要因の１つとして双極分子流に着目し、野辺山ミリ波干 渉計（NMA)およびサブミリ波電波望遠鏡ASTEを用いた観測をオリオン座分子雲 2領域で最も強い1.3mmダスト連続波源であるクラスター形成領域FIR 4(Chini et al. 1997) に対して行った。

NMAによる3mm帯ダスト連続波の結果からこれまで１つの原始星候補天体だと思 われていたFIR 4が11個のコアの集合体であることが明らかになった。

ASTEによる$^{12}$CO($J$=3-2)の観測からFIR 4の北東に位置するFIR 3から空 の面に沿って双極分子流が放出されており、この分子流の先端にNMAによる H$^{13}$CO$^{+}$輝線の観測で検出されたFIR 4に付随する高密度ガス(FIR 4 クランプ)が位置していることが明らかになった。FIR 4クランプはFIR 3から の分子流の先端にそってcavity状の構造を持つ。さらにこのcavity内に分子流 と周辺の高密度ガスの相互作用にともなうショックをトレースすると考えられ るSiO,CH$_{3}$OH輝線をNMA,ASTEにより検出した。CH$_{3}$OH分子輝線のスペ クトルは相互作用を示唆する非対称的なwing成分を持つ。各ラインの速度構造 を比較することでcavity構造のある領域で線幅が増大していることが明らかに なった。これらのことから、FIR 3の分子流とFIR 4クランプとが相互作用をし ていることが明らかになった。

FIR 4領域以外のOMC-2/3領域の温度は20Ｋ程度であるのに対して、FIR 4領域 は52.5 Kとより高温状態になっている。この高温状態はショックによって作ら れたものだと考えられる。Jeans lengthとダストコア間のseparationがほぼ一 致していることから、FIR 4クランプ内のコアは現在の温度付近で分裂した可 能性があることを示す結果が出た。また、コアが分裂するまでのtime scaleと 相互作用を受けているtime scaleがほぼ等しく相互作用期間中にコアが分裂し た考えても矛盾しないことが明らかになった。こられのコアのうち約半数は既 に重力的に崩壊し星形成の兆候をもっていることが、ダストから求めたガス質 量とビリアル質量の比較からわかった。すなわち、本観測結果は、FIR 3の分 子流とFIR 4クランプとが相互作用をすることでFIR 4クランプの外圧が増大し 重力不安定性を引起すことで星形成を誘発している可能性があると解釈するこ とが出来る。

　銀河系中心部はガスの密度、磁場の強さ等、さまざまな物理量、状態がディ スクと異なっていることが知られている。我々のグループは「なんてん」望遠 鏡による12CO(J=1-0)銀河面サーベイ観測により、銀河系の分子ガスの分布を 明らかにしてきた。その中で広範な銀河系中心部のデータの再解析を詳細にし、 ループ状の分子雲を2つ発見した。これらのループは速度構造、エネルギーか ら超新星爆発では説明できず、これらの分子雲ループの起源として、新たにパー カー不安定性による磁気浮上を提案した。このモデルにより、分子雲ループの 形状、速度構造を矛盾なく説明することが可能である。また、これらのループ に対し、ASTE望遠鏡を用いたCO(3-2)輝線、NANTEN2望遠鏡を用いたCO(4-3)輝 線観測も行っており、それらの結果も紹介する。さらに、銀河系中心部におい て他のループ候補天体の同定を行っており、その結果も合わせて紹介する。　 チリ・アタカマ高地に設置されたNANTEN2望遠鏡は昨年度(2006年度)より、科 学運用に突入した。2006年度は500GHz/800GHz帯の同時観測を精力的に行った。 観測ターゲットは大質量形成領域、銀河系中心部、系外銀河と多岐にわたって いる。講演では昨季の結果を紹介し、今季の計画を紹介する。

To reveal the relation between clusters and associated clumps, we have carried out a survey of dense clumps associated with 12 embedded clusters in the C18O (J =1-0) and H13CO+(J=1-0) line emission using the Nobeyama 45m radio telescope with the 25-BEam Array Receiver Systems (BEARS) in the period from 2005 December to 2006 May. In this observations we obtained typically 6'×6'area in C18O and 5'×5'area in H13CO+, respectively around the center of 12 nearby cluster-forming regions. The target are the embedded clusters selected from the catalog by Lada & Lada (2003) and the NH3(1,1) and H2O survey results with the 45m telescope. We discovered the natal clumps with sizes of 0.2 - 1 pc and masses of 60 - 1800 Msun for the clusters. The C18O clumps are located toward the clusters, while the H13CO+ ones seems slightly shifted from the clusters. Our analysis shows that all the clumps are most likely to be in virial equilibrium. Three relations were found from our C18O data: maximum stellar mass of the cluster and velocity width of clump, size and velocity width of clump, and maximum stellar mass of cluster and clump mass. We also found the relation of the central concentration ratio of clumps, which is derived from the ratio of central mass and total mass of clump, and the cluster mass.

On the basis of the physical properties (size, mass, and velocity width) of the dense clumps we found, the role of the C18O and H13CO+ clumps and a new scenario of massive star formation process are proposed as follows. The C18O clumps keep the mass, size, and velocity width just before the cluster formation. It is likely that the most massive stars are born from the Larson-Penston-like accretion in the cores at the cluster center in the early stages of <1 Myr, then we suggest that massive stars form within individual cores through the dynamical accretion in a similar way to the case of the low-mass star formation.

The environment of galaxies seems to play a key role in the evolution and formation of galaxies. The morphological appearance, ISM properties, star formation and nuclear activity are known to be conditioned by interactions between galaxies. In order to quantify what is the effect of the environment, an unbiased sample of galaxies free of interaction and with multiwavelength information is needed. To that aim, we are studying a numerous (‾1000), well-defined and complete sample of isolated galaxies (AMIGA project, http://www.iaa.es/AMIGA.html,) based on the Catalogue of Isolated Galaxies (Karatchenseva, 1973) and building a database that currently contains optical luminosities, Ha, FIR and NIR, radio-continuum, HI and CO(1-0) information. I focus in this talk on the neutral gas (both atomic and molecular) properties of these isolated galaxies and compare with other samples of nearby galaxies in denser environments where interactions events are more likely, such as Hickson compact groups. In particular, I will also discuss the mean properties of the neutral gas in nearby radio-galaxies and luminous IR galaxies with respect to our new reference of very isolated galaxies.

研究員として野辺山宇宙電波観測所に在籍してきた２年余りの間に、 行ってきた研究等についてまとめたいと思います。 まずHI・COサーベイデータを用いて銀河系の３次元的な星間ガス分布 を運動学的距離に基づいて明らかにするという研究を大学院時代から 引き続いて進めてきました。 その発展として、星ディスクの広がりを明らかにするという目的で 木曽観測所のシュミット望遠鏡を用いた銀河系反中心方向の可視光 多色サーベイ観測を行い、銀河系最外縁部のOB型星の広がりについて 調べてきました。その結果、星の指数ディスクが20kpc以遠まで広が っている可能性があることが分かってきました。 これが本当であれば、20kpc以遠にも分子雲が多く存在するはずで あると考え、2006年度の所内観測時間を用いて野辺山45m鏡を用い た銀河系反中心方向のサーベイ観測にトライしてきました。 またCOアトラスグループのメンバーとして、おとめ座銀河団銀河の CO観測を進めてきました。VLAによるHIデータと比較し、HIガスが剥 ぎ取られている銀河では分子ガス比が異常に高い銀河が多数見つか り、ガスディスクが銀河団環境によって特殊な状態にあることがわか ってきました。 また銀河の星間ガスの供給源を探るという目的で、ASTE・45m望遠鏡 を用いて近傍楕円銀河の無バイアスCOサーベイ観測なども行ってきました。 サイエンスの傍ら newstarのタスク開発等にも携わってきましたので、 その紹介なども行いたいと思います。

I present the radio continuum results of the monitorings and comparison the data for X-ray binaries with relativistic jets aka 'microquasars' and AGNs and quasars. We have unique data from All-sky survey from the WMAP experiment for detection of the microwave background fluctuations. We carried out identifications of the total list of 323 sources detected after 3 years of the WMAP mission. Such studies give us optical classifications (galaxies, AGN, QSO, BL Lac) and radio properties -- spectra ( logS-log(nu) ) from total radio band sometimes from 10 MHz to 250 GHz. Based on such work we defined a number of the bright (at millimeter wavelengths) sources around the sky. At least 1500 extragalactic sources with S_nu(22GHz) there are in the sky.

The new European CMB Planck mission will launch in 2008. During its all-sky survey Planck will probably detect 5000-10000 sources in nine bands of 30 - 857 GHz, most of them are variable AGNs and quasars. It is extremely important to support these detections by the close ground low-frequency measurements in order to obtain the total spectra from meter/decimeter to millimeter/submillimeter wavelengths. A first step in the Planck sources studies could be observations of the these 500-1000 sources having intensive extrapolated high-frequency (>20 GHz) emission with RATAN at 1-30 GHz and NMA/45m in Nobeyama Radio Observatory at ‾40-110 GHz. The successful experience of our Russian-Japan collaboration in the microquasars studies allow to hope that such extragalactic project could be solved.

ペルーのワンカイヨ地区に民間の電話会社所有の３２mのパラボラアンテナを ペルー地球物理研究所へ移管して電波望遠鏡に改造する計画を２００２年から 進めている。３２m電波望遠鏡には野辺山で作られた常温の6.7GHzの受信機を 設置し、鹿島の宇宙通信センターで準備されたアンテナコントロール用のパソ コンインターフェースを設置し、まずはメタノールメーザの観測を予定している。

　ペルーに宇宙電波天文台を作ることは、ペルーが世界の天文学に参加すると いう大きな意味がある。しかしながら、電話局との交渉は進んだが未だに移管 が実現しておらず、その実現までには様々な問題等を解決していかなければな らない。講演では計画の詳細を説明する予定である。

「あかり」は、昨年2月に打ち上げられた赤外線天文衛星で、近・中間赤外線 カメラ(IRC;波長2--26um)と遠赤外線サーベイ装置(FIS;波長50--200um)を搭載 している。我々は、搭載装置の評価期間に於いて、波長9～160umの7つの赤外 線波長帯で、こぎつね座の反射星雲IC4954/4955のイメージング観測を行った。

IC4954は、銀河面方向にあり、7-15Myrの散開星団を伴う反射星雲である。あ かりにより、11um帯で初めて検出した星雲内の若い(～1Myr)星の存在と、 9,11,18um帯イメージの比較から推測される放射場強度の空間分布、星雲が励 起源から受けるエネルギーとダストからの再放射の収支の検討、星雲周囲 (1°x1°)での赤外線放射と水素21cm線の空間分布の比較などから、この領域 で３世代に渡って進行中の星形成連鎖の証拠を捉えることができた。

今日は、この観測例の紹介を通じて、星形成領域・星間物質の研究に対するあ かりの可能性を紹介したい。

　私は、２つの地方の科学館勤務を経験してまいりました。今回は、長い自己紹 介ということで、これまで行ってきた科学館活動（や、地方科学館の実態）につ いてお話します。また、皆さんがお考えの天文教育、今後の野辺山の広報普及に ついてもお聞かせ願えればと思います。