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研究者向け

国立天文台野辺山談話会 : NRO Colloquium

過去の談話会 (2009年度)

2009/04/08

日時 2009/04/08 (水)
場所
講演者 井上裕文 (東京大学)
タイトル 超伝導トンネル接合を用いた雑音源の開発
概要

冷却増幅器は電波天文学で用いられる分光観測用受信機の初段、または二段目に 位置する主要な構成要素であり、多くの研究機関で広帯域化・低雑音化を目指し 開発が進められている。

一般に、増幅器の性能を表わす雑音指数(雑音温度)の測定は増幅器に二つの異な る電力(等価温度)の参照信号を入力し、その応答を調べることによって行う。こ の参照信号の電力は増幅器の持つ微小な雑音と同程度であることが望ましく、既 存の方法ではアバランシェダイオードの出力を減衰器で約1/100にすることによ り参照信号を作り出す。しかしアバランシェダイオードと増幅器の間にある減衰 器やケーブルに起因する誤差が大きい(十数%)という問題があるため、参照信号 源と増幅器を直結できる方法が望まれている。

本研究では、超伝導トンネル接合(以下SIS接合)を雑音源として利用する方法を 提案する。 SIS接合に電圧をかけるとバイアス電圧に比例した微小な電力の ショットノイズを出力するため、高精度な雑音測定(誤差3%)を可能にする参照信 号源として利用できる可能性を秘めている。そこでまず、SIS接合で発生する ショットノイズを損失・反射なく増幅器に伝えるようにSIS素子および筐体を設 計した。設計に基づき製造装置を用いてSIS素子を作成し、その常伝導抵抗値が 設計値50$ \Omega$に対し1$\Omega$以内になっていることを確認した。また、既 存の方法を用いて増幅器を十分な精度で性能評価した後、この増幅器を用いて SIS素子で発生するショットノイズを調査した。本講演では以上の研究成果につ いて報告する。

講演資料など

2009/05/27

日時 2009/05/27 (水)
場所
講演者 松下聡樹 (ASIAA)
タイトル 一酸化炭素分子輝線で見たAGN周辺の分子ガスの様子
概要

AGN統一モデルが提唱されて以来、AGNを取り囲むトーラスの探索 が様々な波長で行われてきた。トーラスの主成分であると思われる 分子ガスが直接観測できるミリ波でも多くの観測が行われ、典型的 なセイファート2型銀河であるNGC 1068やM51で、AGNの周りに数百 pcスケールの分子ガスの剛体回転構造(単純な解釈ではAGNを中心 にして回転する円盤もしくはトーラス状の構造)が発見された。

しかし、最近の我々の 10 - 20 pc スケールの一酸化炭素輝線 観測では、このスケールでもAGNの周りに剛体回転構造を持っている 銀河がある一方、必ずしもこのような構造ではない銀河も見られた。

この談話会では、これらの我々のSMAおよびPdBIで行った 一酸化炭素分子輝線の観測から明らかになってきたAGN周辺の 分子ガスの様子を紹介する。

講演資料など

2009/09/09

日時 2009/09/09 (水)
場所
講演者 前川淳(国立天文台野辺山、折り紙研究家)
タイトル 概説・折り紙の科学: An Outline of Origami Science
概要

天文台における談話会という、異分野の機会であるが、 折り紙と科学・数学との関わりを、概説として発表する。 科学教育や遊戯数学(Recreational Mathematics)、 学際的研究に興味を持つひとなど、どなたにも聞いていただきたい。

折り紙は、そのままOrigamiとして、世界的に使われる言葉に なっているが、その本場と言える日本では、幼児のときに誰もが 経験することがある種の先入見となって、幼児教育の一分野という 認識が浸透しており、以下のようなことに関する認知度は低い。

すなわち、工芸的に精緻なモデルやパズルとして難易度が高い モデルがあること。また、数学や科学・工学の研究主題にも なっていることである。(誤解のないようにつけ加えるが、 幼児教育や遊びとしての折り紙は、きわめて重要である)

本発表では、以上のような広がりを持つ、折り紙の世界を概観する。 なお、科学・工学研究の主題となっている折り紙は、 膜状物質の変形ということを考える場合の、キャッチフレーズ的な キーワードという側面も強いものだが、そうした研究においても、 アート方面の作家・研究者との交流は少なくない。

講演資料など

2009/12/09

日時 2009/12/09 (水)
場所
講演者 Okere B. I. and Obi I. A.
タイトル Nigeria and Astronomy Development: An Overview
概要

Nigeria is one of the few countries in sub-saharan Africa where modern astronomy is taught at both undergraduate and postgraduate levels. The Astronomical community has been involved in mainstream research activities in modern astronomy and astrophysics. From 1980 to 2009 Astronomers in Nigeria have made significant progress in the area of theoretical High Energy Astronomy. In this presentation, we give a brief description of the Nigerian nation; her geographical location, people and culture, and the development of Astronomy in the country.

講演資料など

2009/12/16

日時 2009/12/16 (水)
場所
講演者 Ramesh Balasubramanyam (Raman Research Institute, Bangalore, India)
タイトル The Himalayan 3m Sub-millimeterwave Telescope Prototype: Concept and Design of `3m STeP'
概要

Sub-millimeter waveband is an important electomagnetic window for understanding the nature of young stars and the young Universe. The Himalayan region of India has dry high-altitude desert sites suitable for sub-millimeterwave astronomy and we at the Raman Research Institue, Bangalore, India are working to make use of it. Large (30m or larger) single-dishes fitted with large format bolometric arrays are required for fast surveys of large swathes of sky for high redshift continuum sources. Active optics is an expensive way to constructing such large telescopes. We have proposed an alternate four mirror optical system that allows economical realisation of such large telescopes in the submillimeterwave range. In this talk, I will present the optics and the design of a mobile 3m prototype telescope based on this optics, pointing out the many advantages this design has.

講演資料など

2010/01/05

日時 2010/01/05 (火)
場所
講演者 鈴木有春(Graduate Student Researcher Adrian Lee Group U.C.Berkeley)
タイトル 宇宙マイクロ波背景放射(CMB)偏光観測に向けた Sinuousアンテナ結合型TESボロメターと 広域周波数反射防止膜の開発
概要

宇宙マイクロ波背景放射、Bモード偏光観測に向けた 広域周波数帯検出器の開発を行っております。 直線偏光や2オクターヴを超える周波数帯などの特性を持つSinuousアンテナ をマルチカラーバンドパスフィルター、さらにTESボロメターに結合することにより、 一つのピクセルで多色観測を可能にしました。 実験ではアンテナに集光するために楕円レンズをつけアンテナのビーム特性、 クロス偏光、バンドパスフィルターの周波数帯域などを測定いたしました。 また、広域周波数帯にする事により必要となる 広域周波数反射防止膜の開発についてもお話したいと思います。

講演資料など

2010/01/15

日時 2010/01/15 (金)
場所
講演者 Jennifer Donovan Meyer (Stony Brook University)
タイトル ESO 381-47: an early-type galaxy with extended HI and a star forming ring
概要

ESO 381-47 is an early type galaxy with an extended HI disk. GALEX and very deep optical images reveal a distinct stellar ring far outside the optical body of the galaxy with a diameter of ∼30 kpc, which has undergone recent star formation at 1.8 ラ 10−4 M⊙ yr−1 kpc−2. This level of star formation is consistent with other new results which detect low level star formation below the traditional Kennicutt relation in the outer parts of spiral galaxies. The morphology of this galaxy resembles the recently identified class of ultraviolet objects called extended ultraviolet disks, or XUV-disks. I will present the GALEX and deep optical data, as well as HI observations of this galaxy taken at the ATCA and the VLA, and discuss various possible mechanisms to explain the presence of the ring.

講演資料など

2010/01/20

日時 2010/01/20 (金)
場所
講演者 牛山俊男 (自然写真家)
タイトル
概要

皆さんは最近ゆっくりと夜空を見上げたことがありますか?晴れた日の夕方、 日没後しばらくすると、蒼色の宵空に、ひとつ、またひとつと星たちが輝き始めます。 そして、夜が更ける頃には数えきれないほどの星の光が降り注ぐのです。私たちの 故郷=地球の大地から見上げる、数十、数百、数千光年の気の遠くなるような 旅をしてきた星の輝きは、私たちが今まさに宇宙の中で生きていることを実感できる 瞬間でもあるのです。私たちの身体は、遥か昔に天の川銀河で起こった 超新星爆発によって生まれた星の欠片からできていると考えられています。 そしていつかまた宇宙に還っていくのです。私たちの命は、気の遠くなるような 宇宙の輪廻の中で偶然に生まれてきたのです。私たちはどこから来てどこへ 行くのでしょう。命って何?生きているってどういうこと?私が星空の下、 宇宙と対峙しながら写真を撮り続けるのも、自分探しの旅を続けている からなのでしょうか。今回の講演では、私がここ15年の中で国内・国外で出会った 様々な星空風景をゆったりとお話します。八ヶ岳の三ツ頭山頂で捉えた2001年11月19日 未明のレオニズ、2001年と2003年に長野県と山梨県で撮影した低緯度オーロラなど 貴重な写真も登場します。ご期待ください。

講演資料など