国立天文台野辺山談話会 : NRO Colloquium
過去の談話会 (2015年度)
世話人
- 宮本祐介
- 西村淳
2015/04/08
日時 / 場所 | 2015/04/08 (水), 15:00-16:00 / 輪講室 |
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講演者 | 南谷哲宏 (NAOJ/NRO) |
タイトル | KASI Visiting Report |
概要 |
2015/03/25, 26に、Korea Astronomy and Space Science Institute (KASI, 韓国天文研究院) を訪問し、 KASIで運用している、Korean VLBI Network (KVN) 制御システム、Taeduk Radio Astronomy Observatory (TRAO) 14m 望遠鏡の見学、 電波受信機開発グループ、TRAO Scienceグループとの意見交換等を行ってきたので、 これらについて報告する。 |
講演資料など |
参考URL |
2015/04/15
日時 / 場所 | 2015/04/15 (水), 15:00-16:00 / 輪講室 |
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講演者 | 鳥居和史 (名古屋大学) |
タイトル | 分子雲衝突と大質量星形成 |
概要 |
大質量星の形成過程の理解は天文学の長年の課題であるが、近年、分子雲同士の衝突による誘発的な大質量星・大質量星団の形成が注目されている。 分子雲衝突が誘発的な役割りを果たすというアイデアは古くから考えられていたが(Loren 1976; Habe & Ohta 1992 など)、 観測的には、2009 年の巨大星団Westerlund 2 での発見(Furukawa etal. 2009)以来、目覚ましい発展を遂げた。 鍵となるのは、10-20 km/s におよぶ大きな速度差(衝突速度)であり、この衝突が引き起こす圧縮・乱流の効果により、 ごく短時間で大質量星を形成するというモデルである。 これらの発見を受け、我々は、より一般的な大質量星形成へとこのモデルの適用する研究を進めている。 本講演では、特に三裂星雲M20、RCW120、バブル複合体S116-S118での観測結果について、理論研究との比較も含めて報告する。 これらは全て銀河系のHII領域で、1個〜数個のO型星により励起されており、巨大星団より2桁小さい天体である。 NANTEN2、Mopraといった電波望遠鏡を用いた観測から、これら全ての天体でHII領域に付随する2個の分子雲を同定した。 2個の分子雲の速度差は10-20km/sであり、これらの系に含まれる質量ではこの速度を束縛することはできず、 また、速度構造から、HII領域や超新星残骸の膨張による構造とも解釈できない。 そこで、2個の分子雲が偶発的に衝突し、大質量星の形成をトリガーする分子雲衝突モデルを提案する(Torii et al. 2011, 2015)。 観測結果から計算される衝突のタイムスケールはいずれも0.5Myr程度と短く、これから求められる質量降着率は10^-4 Mo/yr程度と、 大質量星形成に必要な高い質量降着率を満たすことができる(Krumholz et al. 2009など)。 |
講演資料など |
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2015/05/11
日時 / 場所 | 2015/05/11 (月), 15:00-16:00 / 輪講室 |
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講演者 | 谷口琴美 (総合研究大学院大学/国立天文台野辺山宇宙電波観測所) |
タイトル | TMC-1におけるHC5Nの13C同位体分別の観測的研究 -シアノポリインの生成経路に関する考察- |
概要 |
現在までに180種類以上の分子が星間空間で検出されているが、そのうち約40%は炭素鎖分子に分類される。炭素鎖分子は、暗黒星雲に多く存在し、[CCS]/[NH3]の比が分子雲の進化段階の良い指標であることが分かっている。したがって、星間化学と星形成の理解にとって、炭素鎖分子の研究は重要である。炭素鎖分子の生成・破壊メカニズムについては、室内実験の結果を基に数多くのモデル計算が行われている。最近では、炭素鎖分子の13C同位体分別の観測により生成経路を解明する研究が行われてきている。従来、星間空間で有利な反応である、イオン―分子反応がメインの生成経路と考えられていたが、観測的研究から、中性分子同士の反応も重要であることが示されてきている。 本講演では、今までの炭素鎖分子の観測的手法を用いた生成経路の解明の研究例を紹介し、2013-2014及び2014-2015シーズンの野辺山宇宙電波観測所の45m望遠鏡を用いた、TMC-1におけるHC5Nの13C同位体分別の観測結果を示し、この分子の生成経路に関する考察、及びシアノポリインシリーズ分子の炭素鎖成長メカニズムについて考察を行う。 |
講演資料など |
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2015/05/20
日時 / 場所 | 2015/05/20 (水), 15:00-16:00 / 輪講室 |
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講演者 | 竹腰達哉 (NAOJ) |
タイトル | ASTE搭載用多色連続波カメラの開発 |
概要 |
直接検出器を用いた超広帯域、広視野のミリ波サブミリ波帯連続波観測は、サブミリ波銀河、SZ銀河団探査、近傍銀河や星形成領域における熱的放射を効率よく検出し、重要な物理量を推定することを可能にする。このような観測を推進するため、我々は超伝導遷移端センサー(TES)ボロメータを用いた波長 1.1 mm および 850 µm帯の連続波カメラを、ASTE望遠鏡での科学運用を目指して開発を進めている。2014年 3–4 月にかけて、チリ現地にて好天候下での試験観測が行われ、NGC6334Iや銀河中心領域において、ダストのフィラメント状構造や星形成コアの検出に成功した。また、光学系はほぼ回折限界を達成し、ほぼ設計通りの性能であることが確認されたほか、ポインティング性能もASTE望遠鏡の性能と同程度が得られた。 一方本格的な科学運用に向けては、多くの課題が残っている。現地試験の際には、1Hz,1.5Hzなどとその整数倍の周波数において、到達感度を制限する強い周期ノイズが検出されており、冷凍機・コンプレッサー起源のマイクロフォニック雑音やtimestampのジッタ―が原因であることが明らかになり、対策を進めている。ボロメータウェハーや周波数多重化のためのLC回路についても、ダイナミックレンジや歩留りの改善を目指した改良を進めている。2016年に予定されているカメラセッションにおいて本格的なサブミリ波帯連続波サーベイを実現すべく、引き続き開発を推進する。最後に将来計画として、前置光学系として設置可能なポラリメータや450µm 帯までの 6 波長同時観測可能なマルチクロイック TES ボロメータについて紹介する。 |
講演資料など |
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2015/05/27
日時 / 場所 | 2015/05/27 (水), 15:00-16:00 / 輪講室 |
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講演者 | Yoshito SHIMAJIRI (CEA/Saclay) |
タイトル | Probing the growth of IC5146 by filamentary accretion |
概要 | The observations of the Herschel Gould Belt Survey (HGBS) project revealed an omnipresence of parsec-scale filaments in molecular clouds (Andre et al. 2010; Arzoumanian et al. 2011). Detailed analysis of the radial column density profiles shows that filaments are characterized by a quasi-uniform distribution with a typical FWHM value of 0.1 pc (Arzoumanian et al. 2013). This characteristic width of 0.1 pc suggests that filaments may have formed as a result of dissipation of large-scale turbulence (Padoan et al. 2001). Furthermore, a lot of sub filaments are distributed around the main filament (Peretto et al. 2012; Palmeirim et al. 2013). These morphologies suggest that accretion flows are feeding the main filament from the surrounding cloud material. However, investigating the velocity structure of the filaments and the surrounding medium is crucial to confirm this scenario. We have carried out the mapping observations toward the thermally supercritical filaments in the IC 5146 region using the Nobeyama 45 m telescope. We found sub filaments distributed toward perpendicular to the main filaments. The velocity structures of a simple inflowing-gas model have good agreements with those of the observations, suggesting that the sub filaments are inflowing into the main filament and subsequently growing the main filament. These results strongly support the scenario that supercritical filaments undergo gravitational contraction and increase in mass per unit length through accretion of background material. |
講演資料など |
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2015/06/10
日時 / 場所 | 2015/06/10 (水), 15:00-16:00 / 輪講室 |
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講演者 | 宮本祐介 (NAOJ/NRO) |
タイトル | Hot gas in the center of the Seyfert galaxy NGC 3079 |
概要 | The nearby (d = 19.7 Mpc) Seyfert galaxy NGC 3079 exhibits a prominent bubble emerging from the nucleus. In order to investigate the nuclear power source, we carried out ammonia observations toward the center of NGC 3079 with the Tsukuba 32-m telescope and the JVLA. The NH3 (J, K) = (1, 1) through (6,6) lines were detected in absorption at the center of NGC 3079 with the JVLA, although the profile of NH3(3,3) was in emission in contrast to the other transitions. All ammonia absorption lines have two distinct velocity components: one is at the systemic velocity (Vsys ~ 1116 km s-1) and the other is blueshifted (Vsys ~ 1020 km s-1), and both components are aligned along the nuclear jets. The blueshifted NH3(3,3) emission can be regarded as ammonia masers associated with shocks by strong winds probably from newly formed massive stars or supernova explosions in the nuclear megamaser disk. The derived rotational temperature, Trot ~120 K for the systemic component and Trot ~160 K for the blueshifted component, and fractional abundance of NH3 relative to molecular hydrogen H2 are higher than those in other galaxies reported. The high temperature environment at the center may be mainly attributed to heating by the nuclear jets. |
講演資料など |
2015/06/17
日時 / 場所 | 2015/06/17 (水), 15:00-16:00 / 輪講室 |
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講演者 | 金子紘之 (NAOJ/NRO) |
タイトル | 相互作用銀河VV 219の分子ガスの物理性質 |
概要 | 前半では、先月末にギリシャで行われた国際研究会 "Gas, Dust & Star Formation in Galaxies from the Local to Far Universe" の報告を行う。 後半では、この研究会で発表した相互作用銀河の分子ガスの物理性質について取 り上げる。 銀河の衝突現象は、不変的にみられる現象であり、 銀河の進化史においても非常に大きな役割を果たすことが知られている。 銀河衝突で起こされる重要な特質の一つに、星形成活動の活発化があるが、 1980年代から知られているにもかかわらず、 星形成の原料である分子ガスの観測の不十分さからその原因についてはまだ解明 されていない。 本発表ではALMA Cycle 1のデータによる相互作用銀河VV 219での 銀河衝突領域での分子ガスに見られた特徴的構造と、 これを踏まえた今後の研究についても紹介したい。 |
講演資料など |
2015/06/24
日時 / 場所 | 2015/06/24 (水), 15:00-16:00 / 輪講室 |
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講演者 | 松尾光洋 (鹿児島大学/国立天文台野辺山宇宙電波観測所) |
タイトル | 電波望遠鏡を用いた銀河系外縁部分子雲の観測的研究 |
概要 | 我々は、これまで、銀河系外縁部における星形成過程を明らかにするため、星形成の母胎である分子雲のサーベイ観測を行ってきた。 銀河系外縁部は内縁部とは異なる環境であり、星形成は活発ではなく、金属量も少ないことから、宇宙初期に近いと考えられている。 そのような環境での星形成を理解することは銀河進化を知る上で重要であり、そのような環境である領域の中で銀河系外縁部領域は最も近く、詳細な研究ができる領域でもある。 また、近年、OuterArmより遠方にある渦状腕や遠方でのOB型星の存在も示唆されており、より高分解能での遠方分子雲探査が必要となってきている。 分子雲の分布を調べることは、銀河系構造を理解する上でも重要である。 そこで、現在、遠方分子雲探査と銀河系外縁部分子雲の物理状態を明らかにするため、NROレガシー銀河面サーベイプロジェクトの一環として、野辺山45m電波望遠鏡とFORESTを用いた高分解能かつ12CO(J=1-0), 13CO(J=1-0), C18O(J=1-0)の3輝線同時観測で銀河系外縁部の銀河面サーベイを行っている。 本講演では銀河面サーベイプロジェクトの銀河系外縁部における観測報告と、それに関連する研究の紹介を行う。 |
講演資料など |
2015/07/01
日時 / 場所 | 2015/07/01 (水), 15:00-16:00 / 輪講室 |
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講演者 | 上月雄人 (大阪府立大学) |
タイトル | Development for a wideband 100GHz SIS mixer |
概要 |
私は100GHz帯において50%超のRF比帯域と4-12GHz以上のIF帯域においてALMA受信機同等の低雑音性能を実現する超広帯域SISミクサ開発と、同ミクサのFOREST受信機への搭載を目指している。2015年3月16-18日米国ハーバド大学にて開催された"The 26th International Symposium on Space Terahertz Technology"では、同広帯域ミクサ開発をテーマとしたポスター発表で参加した。本講演ではISSTTでの発表内容とミクサ開発進捗、及びISSTT2015で見聞きした最新の受信機・コンポーネント開発の例を紹介したい。 |
講演資料など | https://www.cfa.harvard.edu/events/2015/isstt2015/ |
2015/07/08
日時 / 場所 | 2015/07/08 (水), 15:00-16:00 / 輪講室 |
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講演者 | 清兼和紘(東京大学天文学科/国立天文台チリ観測所) |
タイトル | 原始星コアにおける速度構造 |
概要 |
星形成過程において母体分子雲コアの角運動量分布は、連星形成や原始惑星円盤形成などに重要な役割を果たしている。星周ガスの運動、特に角運動量分布の詳細やその起源については、まだ十分に解明されていない。ダスト連続波観測は運動に関する情報は得られないため、この点に取り組むにはガス輝線の観測が必要である。我々は、二つのアプローチで分子雲コア周りの運動を調べた。一つは、[1]原始星コア内部の空間二次元的な角運動量分布の解析を行った。もう一つは[2]フィラメント中の分子雲コアの回転方向を調べた。 [1]初期の角運動量ベクトルや磁場方向、乱流の程度により回転軸が変化しうることが示唆されている。そこで我々は野辺山45m電波望遠鏡で得られたL1527,L1551NE,B335のデータに対して、空間二次元の比角運動量ベクトルの半径依存性を調べる解析を行った。結果として、L1527において外側から内側に向かって角運動量ベクトルの方向が変化していた。一方で、B335, L1551NEではベクトル方向の変化は見られず剛体回転的なコアであるといえる。これまでの分子雲コアでの角運動量の解析では、平面フィットや位置速度図を用いた解析が行われてきており、回転軸の変化はこれらの解析では得られなかった。角運動量ベクトル分布は連星形成や原始惑星円盤形成などに影響を与えるため、比角運動量ベクトル分布の解析が必要であると考えている。 [2]近年、Herschelによる遠赤外線観測やAzTEC/ASTEなどのサブミリ波観測により、0.1-pc幅のフィラメント構造が普遍的にあることが示された。フィラメントにおける高密度コアの形成を調べることは星形成過程を理解する上で必要不可欠である。そこで我々はMopra望遠鏡を用いて近傍(~140pc)のフィラメント状のLupus分子雲中の領域を多輝線でマッピング観測した。サンプルの中に、IRAS 15398-3359とその隣(~0.13pc西)にあるpresteller coreがある。これら二つのコアを含む領域でC18O(1-0)では北から南に向けて1.4 km/s/pc の速度勾配が見られ、これは過去のNANTENの結果と矛盾しない。一方で、より高密度をトレースするN2H+(1-0)やHC3N(10-9)では、IRAS15398-3359周りで北西から南東にかけて1.2km/s/pc、隣のpresteller coreで東から西にかけて0.8km/s/pcの速度勾配が見られた。この速度勾配は互いのコアで不整列な回転軸(逆回転)を示していると解釈している。このことはフィラメントの伸びの方向とフィラメント中の高密度コアの回転軸が無関係であることを示唆している。 |
講演資料など |
2015/07/15
日時 / 場所 | 2015/07/15 (水), 15:00-16:00 / 輪講室 |
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講演者 | 藤田真司 (筑波大学) |
タイトル | NROレガシー銀河面サーベイプロジェクト:W51領域 |
概要 |
銀河系内の大部分の星は集団的に形成されたものである。さらに中小質量星とは 異なり、大質量星は孤立的に形成されることはなく、巨大分子雲(GMC)中で集団 的にのみ形成されることが知られている。したがってGMC中での集団的星形成の 過程を理解することは、大質量星形成および銀河全体に渡る星形成を知る上で重 要である。しかしながら形成直後の星団は、分子雲に埋もれており可視光等で確 認できない、距離が遠く細かく観測できない、といった問題などからいまだ明ら かになっていないことが多い。 我々は、FOREST受信機を用いた銀河面の高分解能かつ3輝線同時観測(12CO(J=1-0) , 13CO(J=1-0), C18O(J=1-0))を行っている。その中でW51はl=~49°のSagitarius armのtangencial pointに位置するGMC複合体であり、銀河系の中で最も活発な大 質量星形成領域の一つである。この領域は、今もなお活発に星形成が進むW51Aと 以前活発であったW51Bの主に2つに分けられ、またそれらを横切るHigh Velocity Stream(HVS)と呼ばれる細長い(~68 km/s, ~10 pc × ~100 pc)コンポーネントが 特徴的である。本講演では昨シーズンと今シーズンで取得したデータを紹介し、 他輝線での先行研究との比較や今後の方針について議論する予定である。 |
講演資料など |
2015/07/22
日時 / 場所 | 2015/07/22 (水), 15:00-16:00 / 輪講室 |
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講演者 | 斎藤智樹 (国立天文台) |
タイトル | The environments of Ly-alpha blobs |
概要 |
すばる・Suprime-Cam による Ly-alpha 輝線銀河 (LAE) の探査によって、 Ly-alpha blob (LAB) の付随する z~4 電波銀河 (TNJ1338) が、 平均の約3倍の銀河密度を持つ特異な環境にあることが明らかになった (Saito et al. 2015)。 我々はさらに、Ly-alpha 輝線では観測できない、塵に埋もれた星形成活動との 関連性を探るべく、ASTE・AzTEC による 1.1mm 連続波撮像データの解析を行い、 出版済みの VLA 1.4 GHz、IRAM/MAMBO 1.2mm データを合わせて SED の推定を行った。 結果、電波銀河周辺領域において、1.1mm 連続波源 (SMG) を27個同定し、 それらの強度が既存の 1.2mm 連続波観測とも矛盾しないことを確認した。 SMG は基本的には LAE を避けて存在していたものの、電波銀河を含む3天体に 関しては、30'' 以内で一致を示していた。VLA でも検出された SMG は 前景の天体と推測されたが、z~4 と矛盾しない SED を持つ SMG も少なくとも 1天体存在した。それらはおおよそ LAE/SMG 双方でトレースされる大規模構造に沿って 存在しており、この高密度領域内における埋もれた爆発的星形成の存在を示唆している。 この電波銀河周辺領域を他天域と比較するため、同様に取得したすばるのデータで z~3 LAB 3天体の周辺領域について解析を行った。光度・等価幅を揃えた LAE サンプルで 比較すると、SMG の付随する天体の周辺が TNJ1338 領域にもっとも近い銀河密度分布を 示す一方、SMG・電波源共に付随しない天体の周辺は有意な密度超過がほとんど見られなかった。 SMG や電波銀河の付随する天体近傍には、TNJ1338 同様、超高光度の LAE (log (L_Lya [erg/s]) > 43.5) が存在していた。電波源・SMG の付随する LAB は 明るい銀河の形成が加速される高密度領域のよい指標となる一方で、どちらも 付随しない LAB は別の機構での銀河-周辺環境相互作用を反映していると考えられる。 |
講演資料など |
2015/08/19
日時 / 場所 | 2015/08/19 (水), 15:00-16:00 / 輪講室 |
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講演者 | 関沼幹夫 (信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター野辺山ステーション) |
タイトル | 光でわかる植物の栄養状態 ~信大野辺山ステーションの紹介とともに~ |
概要 |
研究紹介として、普通ソバを対象とした紫外励起蛍光分析による光合成関連物質の非破壊計測の事例を紹介します。 植物の世界でも、光計測を用いることにより診断技術が向上しています。 また、天文台に隣接している信大野辺山ステーションの紹介もします。特に、45m電波望遠鏡から見える風景の農業的な意味を話させて頂きます。 話を聞いて頂ければ、白い大きなマシュマロのようなものや、不自然に刈り取られる草原の意味がわかります。 |
講演資料など |
2015/09/02
日時 / 場所 | 2015/09/02 (水), 15:00-16:00 / 輪講室 |
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講演者 | 海部宣男 (国立天文台/名誉教授) |
タイトル | 天文学の大型計画について |
概要 |
天文の観測装置の大型化は宇宙研究を加速し大きな活気をもたらしているが、一方ではそれに伴い、国内・国外共にさまざまな困難も生じている。 この談話会では大型計画を軸として話をし、世界の天文学の中で日本の天文学が果たすべき役割と今後、また野辺山の役割なども視野において、若い皆さんと考えてみたい。 まず、野辺山から始まった日本の天文学の大型計画の歩み、天文学大型計画や中型計画で果たしてきた日本学術会議の役割について話します。 さらに、進み始めた日本の基礎科学全体の大型計画推進政策、国際的には東アジア天文台に象徴される地域連携などの新たな状況についても触れながら、広く意見を交わせればと思っています。 |
講演資料など |
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2015/09/16
日時 / 場所 | 2015/09/16 (水), 15:00-16:00 / 輪講室 |
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講演者 | 岩村宏明 (名古屋大学) |
タイトル | NANTEN2 新制御系 NECST の開発 |
概要 |
我々は現在チリ・アタカマ高地にて観測を行うNANTEN2電波望遠鏡に、新しく搭載する制御系システム、「NECST」の開発を行っている。この開発を行う最大の理由の一つは、現在研究室で計画されている「NASCO」計画の実行を可能にすることである。この「NASCO」計画の概要として、マルチビームによる観測で全天マップを作成するというものがある。それにあたって計算機の更新を行う必要が出てくるが、現状のシステムはRTLinuxを使用している関係上、そのままの移行をすることが出来ない。また、現在使用されているプログラムのバージョンも不明で、「NASCO」に合わせたシステム改修を行うことも出来ない。これらの問題から、新たな制御系システムを開発することは必須となっている。本講演では、新システム開発の具体的な内容とそれによる改善点、及び現在の開発状況について紹介を行う。 |
講演資料など |
2015/09/28
日時 / 場所 | 2015/09/28 (月), 16:00-17:00 / 講義室 2 |
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講演者 | 稲谷順司 (国立天文台/TMT推進室) |
タイトル | 電波望遠鏡広視野化の夢 |
概要 |
その昔、野辺山で超伝導のSIS受信機が実用になり出した頃(1988年頃)、これなら多数の受信機を焦点面に並べることができる、そうすれば、45m鏡の分解能でアンドロメダをマッピングすることも夢ではない、と思ったことがあります。 その要素技術のつもりで、薄膜スパイラル・アンテナやら超伝導発振器(FFO)やらの試作もやりました。 しかし、結局は当面の実用性を重視して、4ビームの受信機("S115Q")に落ち着き、その後、BEARSをつくる経緯になりました。 そういうものがともかくも動きだしたのは前進ではありましたが、「100ビームくらいは」との夢に比べれば小さな前進でした。 私自身は、その後、野辺山を出て、SMILES(宇宙ステーション搭載の大気観測用サブミリ波システム)の開発、ALMAのアンテナ建設、を渡り歩き、広視野化の話は長らく放置したままになりました。 しかし、定年後、暇ができたのを幸いに、かつての広視野化の夢を、もう一度本気で考えてみたくなりました。 この間、天文台の受信機技術は大きく進歩しました。 他方、テラヘルツ・ブームの流れの中で、CMOS集積技術によるミリ波、サブミリ波回路がめざましい発展を遂げています。 この2つを結合すれば、今や、1000画素のヘテロダイン受信機も夢ではない、と思い始めています。 こんな話をたたき台にして、ALMAの次の時代の電波天文学に思いを馳せるのも楽しからず哉、です。 |
講演資料など |
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2015/10/07
日時 / 場所 | 2015/10/07 (水), 15:00-16:00 / 輪講室 |
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講演者 | 石黒正人(国立天文台・名誉教授) |
タイトル | 豊川発、野辺山経由、アタカマ行き |
概要 |
豊川の太陽電波干渉計、野辺山のミリ波干渉計、チリのアルマと、40年以上にわたって電波干渉計のプロジェクトに携わってきた。 特に野辺山からアルマへの流れの中では、未経験のことへの挑戦で暗中模索することが多々あり、全体としては成功したと言えるものの反省すべきことも少なからずあった。 その悪戦苦闘の歴史からなにを学びとるべきかを問う。 |
講演資料など |
2015/10/14
日時 / 場所 | 2015/10/14 (水), 15:00-16:00 / 輪講室 |
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講演者 | 今西貞夫 (鳥類研究家) |
タイトル | 野辺山高原の鳥類 ー特にカッコウ・モズの珍しい繁殖習性についてー |
概要 |
野辺山高原では、今までに約150種もの鳥類が確認されています。これらの種の中で、普通に見られるカッコウとモズでの珍しい繁殖習性ついて話をします。 カッコウは日本には繁殖のために渡って来る夏鳥で、野辺山には5月中旬から来ます。この種は、自分では子育てをせず、他種の巣に卵を産み込み、その後の世話をその種(宿主)に任せる托卵鳥(brood parasite bird)です。世界には約9000種の鳥がいますが、このような習性を持つ鳥は1%弱しかいません。このように他鳥に全てを任せることは、カッコウに取っては非常に楽にみえますが、そうともいえません。 モズも野辺山では夏鳥で、繁殖のためにやってきます。しかし、ここに来る前に、越冬地で繁殖をしてから来ます。このような繁殖をするのではということは、40年以上前から言われていましたが、この観測所内で繁殖する個体で実証されました。このような繁殖形態はitinerant breeding(同一繁殖期内移動繁殖)と言い、確認あるいは可能性があるのは10種にも満たないです。 |
講演資料など |
2015/10/28
日時 / 場所 | 2015/10/28 (水), 15:00-16:00 / 輪講室 |
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講演者 | 小山田涼香、堀内貴史 (信州大学) |
タイトル |
D-dEW分布によるCGM吸収体の内部構造の比較検証 (小山田)
クェーサーのアウトフローガスに見られる時間変動の原因の調査 (堀内) |
概要 |
銀河の形成と進化を解明するには銀河周辺物質(;CGM)の理解が不可欠である。 CGMはクエーサー吸収線の手法を用いれば直接観測が可能だが、一視線方向の吸収体の情報しか調査できなかった。だがレンズクエーサーを背景光源に用いることで、吸収体を多視線で捉えることが可能になり、遠方宇宙の吸収体のサイズや分布といった空間情報を入手できるようになった。 本研究はCGM吸収体サンプルを基に、吸収体のサイズ・構造・等価幅分布をモデル計算で再現することで、CGM吸収体の内部構造を調査した。 比較検証の結果から、CGM吸収体は単一のガス球からなるsingle componentではなく、クランプ状のガス球の集団、multi componentであると推察した。 発表ではより詳細な内部構造の描像や定量的なパラメータの比較などを紹介する。 (小山田)
クェーサーの降着円盤から放出されるアウトフローガスは、円盤から角運動量を排除することによって質量降着を促進するため、クェーサーの成長に不可欠な要素である。 従来、アウトフローガスは幅の広い吸収線 (BAL; FWHM ≥ 2,000km/s)としてクェーサーのスペクトル上に検出されてきた。近年は幅の狭い吸収線(NAL; FWHM ≤ 500km/s)や、それらの吸収線の中間的な線幅をもつmini-BALもアウトフローガス由来の吸収線として注目されている。 多くのBALは1年以内に吸収線の変動を示すことが知られているが、その原因は明らかになっていない。 そこで本研究では、現在吸収線の時間変動の原因として最も有力な (ただしBALクェーサーに関しては賛否が分かれている)、ガスの電離状態変動シナリオの正当性をmini-BAL及びNALクェーサーに対して検証した。このシナリオはクェーサーの光度変動が、アウトフローガスの電離状態に変化を与えた結果、吸収線が変動するというものである。 電離状態変動シナリオを検証するため、mini-BAL / NALクェーサー(それぞれ 4, 5天体)に対する測光・分光同時モニター観測を行った。測光観測は木曽105cmシュミット望遠鏡 / KWFC、分光観測は岡山188cm望遠鏡 / KOOLSをそれぞれ用いて、3ヶ月に1度の頻度で3年以上にわたって行ってきた。 測光モニター観測では、全てのクェーサーに有意な光度変動が確認されたが、電離状態変動シナリオをサポートするための大きな光度変動は観測できなかった。測光・分光同時モニター観測に関しては、mini-BALクェーサーHS1603+3820光度と吸収線の変動傾向に時間的な同期が確認された。以上の結果は、光度変動のみでこのシナリオを支持することができないと同時に、mini-BAL / NALの変動を発生させる補助的な機構の存在を示唆するものである。その補助的な機構の一つとして考えられているシナリオが、X 線観測で検出されるwarm absorberの変動である。このシナリオは、可視・X線分光同時モニター観測で検証可能である。 (堀内) |
講演資料など |
2015/11/04
日時 / 場所 | 2015/11/4 (水), 15:00-16:00 / 輪講室 |
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講演者 | 泉奈都子 (東京大学 天文学教育研究センター) |
タイトル | WISE selected candidate of distant star-forming regions in the outer Galaxy beyond the outer Arm |
概要 |
我々は銀河系の外縁部(銀河半径RG ≧ ~ 13.5 kpc)における星生成領域探査とその観測を包括的に進めている。 この領域は太陽近傍と比較して極めて低いガス密度・金属量など矮小銀河に似た始原的な環境を持つため、 このような特殊な環境が星生成に及ぼす影響をpcスケールの詳細さで研究することができる。 本発表では、WISE衛星による中間赤外線の全天サーベイとFCRAOによるCOのouter Galaxy surveyのデータを 用いた星生成領域の効率的な同定方法とそれを用いて新たに検出した星生成領域候補について紹介する。 さらに、その結果得られた銀河系外縁部における星生成の統計的な性質についても併せて議論したい。 |
講演資料など |
2015/11/12
Date / Place | 2015/11/12 (Thu), 15:00-16:00 / 講義室2 (Seminar room 2) |
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Speaker | Subaru Telescope crews |
Title | Subaru Telescope general maintenance and repairs report |
Abstract |
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Relevant materials |
2015/11/17
日時 / 場所 | 2015/11/17 (火), 15:00-16:00 / 輪講室 |
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講演者 | 川口則幸 (国立天文台/名誉教授) |
タイトル | 中国における大型電波望遠鏡の開発 |
概要 | 上海天文台65mやウルムチ110m、FAST500mなどの 中国の電波望遠鏡建設計画の概要を紹介するほか、東アジア VLBIや野辺山45mの重要性について述べます。 |
講演資料など |
2015/11/24
日時 / 場所 | 2015/11/24 (火), 15:00-16:00 / 輪講室 |
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講演者 | 安藤未彩希 (総研大天文科学専攻/国立天文台) |
タイトル | The distribution of 12CO(2-1) and 13CO(2-1) in merging starburst galaxy NGC 1614 |
概要 | ここでは現在行っている研究について紹介する。 ガスを豊富に持つ銀河が衝突することで星形成活動が活発になることが、観測面と理論面の双方から示されている。 銀河内のガスは星の材料となる一方で、超新星爆発や大質量星からの星風などによって強い影響を受ける。 そのため、銀河の進化シナリオや衝突銀河におけるガスの役割を知るために、分子ガスの物理状態や構造を観測することは大事である。 星形成などの影響を受けた分子ガスは通常の銀河におけるものとは異なる分布を示すことがある。 その1つとして、過去の研究から星形成活動の活発な銀河における12CO/13CO(1-0)比は通常の銀河よりも高くなることが知られている。 この原因としては温度や密度、abundance等の違いが考えられている。 しかし、12CO/13CO比が空間的に分解された観測の数は十分ではなく、どのような物理状態がこうした比の違いを作り出すのか制限が付けきれていない。 本研究では初期段階として、衝突後期段階にある星形成銀河NGC1614における空間的に分解された12CO(1-0)と13CO(1-0)の分布と銀河の構造の比較を行い関係を探っていこうとしている。 |
講演資料など |
2015/12/15
日時 / 場所 | 2015/12/15 (火), 15:00-16:00 / 輪講室 |
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講演者 | 松澤歩 (総合研究大学院大学) |
タイトル | Study on the Verification Method of Pointing Performance of Submillimeter Wavelength Antenna through the ALMA |
概要 |
ALMA (Atacama Large Millimeter/Submillimeter Array) is an astronomical radio interferometer of millimeter/submillimeter wavelength composed of 66 antennas. All the ALMA antennas are required to meet high pointing performance which is better than 0.6 arcsec in tracking a star under the primary operating conditions. In this presentation, the detailed verification measurements of the pointing performance in tracking a star of the ALMA ACA antennas were performed with an optical pointing telescope and angular encoders. In particular, the estimation method of the pointing error due to optical seeing is investigated. As a result, the method to estimate contribution of the pointing error due to optical seeing is improved by developing a relation between the pointing error due to optical seeing, integration time and averaged wind velocity. |
講演資料など |
2016/01/21
日時 / 場所 | 2016/01/21 (木), 15:00-16:00 / 輪講室 |
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講演者 | 大橋聡史(東京大学/国立天文台チリ観測所) |
タイトル | The chemical evolutions and dynamics of molecular dense cores |
概要 |
銀河系のほとんどの星は巨大分子雲(GMCs)の中で星団として誕生することが知られている。 中でも密度が濃くコンパクトな分子雲コアが星の誕生現場であると考えられている(Benson & Myers 1989)。 この分子雲コアからいつ、どのように星団が誕生するのかは、分子雲コアの時間進化を追うことができないため明らかになっていない。 しかし近年、暗黒星雲において分子雲コアの進化を化学組成の変化から導くことに成功し、 化学進化と分子雲コアの時間進化に密接な関係があることが示唆されている(Suzuki et al. 1992)。 そこで我々は、ほとんどの星の誕生現場である巨大分子雲で化学進化が成り立つのか調べ、化学進化研究の確立を目指している。 さらに化学進化を用いることで、若い分子雲コアと進化が進んだ分子雲コアとの判別ができ、コアの物理状態の進化がわかる。 まず初めに我々は地球から最も近いGMCであるOrion A Cloudにおける分子雲コアの化学を調べた。 その結果、星なしコアではCCS,HC3Nなどの炭素鎖分子が卓越し、星ありコアではNH3やN2H+が卓越する結果が得られた。 これは巨大分子雲でも化学進化が成り立つことを示している。さらに化学進化と乱流の散逸には相関が見られ、乱流の散逸が 分子雲コアを非平衡にさせ星形成を行う重要な要因であることも示唆される(Ohashi et al. 2014)。 また他の巨大分子雲や大質量星形成領域であるInfrared Dark Clouds (IRDCs)でも化学進化が成り立つのか調べ、Orion A Cloudと同様の結果が得られた(Ohashi et al. 2015)。 また化学的に非常に後期段階にも関わらず、星形成活動がないコアを発見し、星形成直前の分子雲コアである可能性を指摘した。 これらのことは、分子雲コアの進化や星形成の初期条件を探る上で、化学進化が非常に強力な手段となりうることを示している。 |
講演資料など |
2016/02/01
日時 / 場所 | 2016/02/01 (月), 13:30-14:30 / 講義室2 |
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講演者 | 世古 明史 (京都大学) |
タイトル | 銀河の激動進化期における星形成銀河の星間物質の性質 |
概要 |
z=1-2 (約80-100億年前) の時代は宇宙の星形成率密度が最も高く、 銀河の激動進化期と呼ばれており、この時代を調べることは 銀河進化の理解に不可欠である。近年、ミリ波、サブミリ波、 遠赤外線領域の高感度望遠鏡の登場により、激動進化期における 一般的な星形成銀河の分子ガス、ダスト観測が可能になってきた。 これまでの研究から z=0 から 2 に向かって分子ガスの質量・ 星質量に対する割合・ダスト質量は大きくなっていることが 分かってきた。しかし、これらの量の星質量に対する依存性や 金属量に対する依存性などについてはまだよく分かっていない。 そこで我々は、ALMA を用いて z~1.4 にある一般的な星形成銀河 20 天体の CO(5-4) 観測とダスト観測を行った。我々のサンプルは これまでの研究に比べて星質量が 1/5 程度のものまで含んでおり、 また静止系可視の分光観測から金属量が求まっている。11 天体から CO 輝線を、5 天体からダスト放射を検出した。検出されなかった 銀河も含めたスタッキング解析から、分子ガスの質量・割合は 同程度の星質量の近傍銀河に比べて大きいこと、星質量が大きい 銀河ほど分子ガスの質量は大きくなるが、分子ガスの割合は小さく なることが分かった。また、金属量が大きくなるほど分子ガスの 割合が小さくなることが分かった。これらの結果をガスの流入(inflow)・ 流出(outflow)を考慮した銀河の化学進化モデルと比較すると、 inflow ~ outflow + SFR となり、銀河は入ってきたガスをその場 その場で使いながら進化していることが分かった。ダスト質量も 近傍の銀河に比べて大きく、銀河の星質量や金属量が大きくなる ほど大きくなることが分かった。ガス・ダスト比は近傍銀河に 比べて 3-4 倍大きいことが分かった。これは野辺山 45 m 電波 望遠鏡を用いた研究からも示唆されている。発表では現在 45 m 電波望遠鏡を用いて行っている z=0.1-0.2 にある一般的な星形成 銀河の分子ガスの観測についても話す予定である。
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講演資料など |
参考文献 |
2016/02/10
日時 / 場所 | 2016/02/10 (水), 15:00-16:00 / 講義室2 |
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講演者 | 竹川 俊也 (慶應義塾大学) |
タイトル | 銀河系中心の質量供給過程とヘンな雲たち |
概要 |
銀河系中心核Sgr A*は強烈な電波源として観測され、その正体は4百万太陽質量の超巨大ブラックホールと考えられている。 現在、Sgr A*は極端に非活動な銀河中心核であるが、過去には激しく活動していた可能性がいくつかの観測的研究により示唆されている。 そして、核周円盤(circumnuclear disk; CND)と呼ばれる高温・高密度な分子ガスリングがSgr A*を取り囲んでいる。 CNDの内半径は約2 pcであり、Sgr A*に対し非対称的に約10 pcに渡り広がっている。 CNDは中心核活動の燃料貯蔵庫であるとともに、過去の中心核活動を反映している可能性がある。 そのため、CNDの起源およびその実体を把握することは、中心核の活動性を理解する上で極めて重要である。 我々は近年、野辺山45 m電波望遠鏡およびASTE 10 m電波望遠鏡を用いて、CNDとその周辺の詳細な分子輝線観測を行っている。 その結果、巨大分子雲M–0.13–0.08 (+20 km/s cloud)とCNDとを直接的に繋ぐ構造を発見し、CNDの一部がその手前にある+20 km/s cloudに突入していると考えると観測結果をうまく説明できることを見出した。 このような衝突により、分子ガスが角運動量および運動エネルギーを失うことで、中心核領域への質量供給が促進される可能性がある。 本講演では、まず銀河系の質量供給過程について概観し、我々のCND観測結果を報告する。 また、我々慶應大のチームは、銀河系中心に多数存在する超高速度コンパクト雲(high velocity compact cloud; HVCC)と呼ばれる特異分子雲の包括的な研究も推進している。 そして最近、中心核から約60 pcの位置にあるHVCC (CO–0.40–0.22)が10万太陽質量の中間質量ブラックホールを内包している可能性があることが、野辺山45 m鏡による詳細な分子輝線観測により明らかになった。 本講演では、これらHVCCの最新研究成果も報告するとともに、現在進行中の銀河系中心領域の大規模サーベイの紹介も行いたい。 |
講演資料など |
2016/02/15
日時 / 場所 | 2016/02/15 (月), 16:30-17:30 / 輪講室 |
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講演者 | 谷口琴美 (総合研究大学院大学/国立天文台野辺山宇宙電波観測所) |
タイトル | Title:Chemistry of Carbon-Chain Molecules in Star-Forming Regions |
概要 |
炭素鎖分子は星形成段階の良い指標として用いられることがあるが、 これは低質量星形成領域で確立されたものです。 今まで、大質量星形成領域の炭素鎖分子の化学進化の研究例はありません。 そこで、博士課程の研究では、prestellarからprotostellarのコアの 炭素鎖分子のサーベイ観測を45m望遠鏡を使って行っています。 また、G28.28-0.36(hot core)のラインサーベイ観測及びVLAでの mapping観測からhot coreの炭素鎖分子の生成メカニズムを調べる予定です。 本講演では、博士課程研究の最終目標とそれに対する各観測の意義を説明します。 |
講演資料など |
2016/02/29
日時 / 場所 | 2016/02/29 (月), 15:00-16:00 / 輪講室 |
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講演者 | Dragan SALAK (Kwansei Gakuin University) |
タイトル | The ALMA view of nearby galaxies: Observations of the barred starburst galaxy NGC 1808 |
概要 |
In recent years, we have witnessed a revolution in astronomy owing to the Atacama Large Millimeter/submillimeter Array (ALMA). In this talk, I present the results from the first ALMA observatons of NGC 1808, a nearby barred starburst galaxy with an outflow. Large-field CO (J=1-0) observatons at high resolution (2” or 100 pc) reveal molecular gas in (1) a circnumnuclear disk (R<200 pc), (2) 500-pc ring, (3) gas-rich bar, and (4) galactic disk. On the galactic scale, giant molecular cloud complexes (1e6-1e7 Msun) are detected in the bar region with prominent velocity gradient (shear). I discuss the star formation and molecular-cloud evolution in the bar based on the observed CO-Hα offsets, shear, and velocity dispersion. In the inner R<500 pc region, we find evidence of a warp and non-circular motions due to a nuclear spiral arm and outflow. Deconvolution of the central rotation curve reveals multiple mass components including a massive core (1e7 Msun) within R<50 pc. |
講演資料など |
2016/03/22
日時 / 場所 | 2016/03/22 (火), 14:00-15:00 / 講義室2 |
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講演者 | 岩田 悠平 (慶應義塾大学) |
タイトル | 銀河系中心核Sgr A*の43 GHz帯における強度変動と準周期的振動の検出 |
概要 |
銀河系の中心核は、Sgr A*と呼ばれる強烈な点状電波天体として認識され、この位置には約400万太陽質量のブラックホールがあると考えられている。 しかしながらSgr A*は、未だ一般相対論が予言するブラックホールの「候補天体」に過ぎない。 一般にブラックホール候補天体は、その光度に準周期的振動(Quasi-Periodic Oscillation; QPO)と呼ばれる特有の変動現象を伴う事が知られている。 これは、一般相対論的効果を受けた降着円盤内の軌道運動とエピサイクリック運動との共鳴に起因する現象と解釈されており、ブラックホールの有力な存在証拠の一つと考えられている。 Sgr A*もまた、近赤外線およびX線フレア中にQPOを呈しているとの報告があり、電波領域でも43 GHz帯においてQPOの検出が報告されている。 我々は、Miyoshi et al. (2011)でQPOの検出報告があった43 GHz帯でのVLBAによるデータを入手し、強度変動の詳細な周期解析を行った。 2004年3月8日のデータを解析した結果、Sgr A*は43 GHzにおいて13%変動し、少なくとも14.6分、32.1分に有意な周期的振動を示すことが分かった。 これらの周期を降着円盤の共鳴振動モデルでフィットするならば、いて座A*にある超巨大ブラックホールのスピンパラメータは0.56または0.98と求められる。 加えて、他の日時のデータの解析も行ったところ、明らかな周期的振動は見出されなかった。 2004年3月8日はいて座A*がフレアを起こした翌日であり、本研究の解析結果はフレア活動とQPOとの関係を如実に示す結果と言える。 |
講演資料など |
2016/03/28
日時 / 場所 | 2016/03/28 (月), 15:30-16:30 / 輪講室 |
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講演者 | 齋藤 泰文 (NRO/NAOJ) |
タイトル | 栄光と挫折と・・・ ~私の周波数保護25年の歩み~ |
概要 |
1990年7月に、私は旧郵政省電波関係部門から野辺山宇宙電波観測所に転勤してきました それ以来、観測所の運用・保守の仕事をメインに、傍らで25年間一貫して周波数保護の仕事にも携わってきました。 この長い間には、電波天文にとって良かったこと、その反対によくなかったことなど、いろいろあります。 私が在職していたのは25年でしかありませんが、私がこちらに来る以前から諸先輩方のご努力により、周波数保護の基本レールは敷かれておりました。 私はそのレールに乗って走ってきただけかもしれません。そのようなことを踏まえつつ、野辺山で行なってきた周波数保護の仕事をふり返ってみたいと思います。 |
講演資料など |
2016/03/29
日時 / 場所 | 2016/03/29 (火), 15:30-16:30 / 輪講室 |
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講演者 | 西村淳 (NRO/NAOJ) |
タイトル | 野辺山で過ごして |
概要 |
野辺山に来てから2年の間に行ってきたことを振り返りたい。 まず初めに、FOREST の制御系の検討・整備について紹介する。 NRO ではこれまで、T100 (シングルビーム)、TZ (2ビーム) と ALMA スペックの受信機を搭載した高性能受信機の開発経験がある。 FOREST の受信機制御系は、当初、TZ の制御系を増強させる方向で進められていたが、制御にかかる応答時間の増大や、システムの複雑度の増大といった問題から、共同利用に耐えうる使いやすい制御系の整備は遅れていた。 2015 年度の FOREST では制御系を PCI ボード制御と Ethernet 制御に集約することで、必要な装置数を大幅に削減した。 これら装置群を統一的に操作するためにソフトウェアを Python で構築した。 次に、FUGIN プロジェクト並びに所内観測によって進めている FOREST を用いた分子雲の CO 広域サーベイについて紹介する。 FOREST で得られるデータ量・ファイル数は膨大であり、これらを効率良く管理し解析する必要があったため、NOSTAR ならびに CASA を用いた半自動解析パイプラインを構築した。 このパイプラインを用いて、現在、解析を進めており、M17 領域と Cygnus-X 領域について、分子雲の分布と星形成の関係について研究を進めている。 M17 は N-cloud と SW-cloud の 2 つの GMC が散開星団 NGC6618 と隣接して存在する領域である。 FUGIN の観測により、N-cloud, SW-cloud が初めて高分解能で全域をカバーされた。 これにより、N-cloud, SW-cloud で分子雲の物理的性質が異なっている事、星形成の進行状況が異なる事が明らかになった。 また、NGC6618 の形成起源として、N-cloud, SW-cloud の分子雲衝突が示唆される結果が得られている。 Cygnus-X 領域については、まだ観測の途中ではあるが、大質量星形成領域におけるダイナミックな分子雲の描像が得られつつあるので紹介したい。 |
講演資料など |