(天文学者 岡本丈典氏による隷書)

立松 健一(たてまつ けんいち)

国立天文台教授、総合研究大学院大学教授、天文学者

前野辺山宇宙電波観測所長(2017.7-2024.9)、元国立天文台アルマ推進室長

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信濃毎日新聞のコラム「知・究・学」を担当しました(2023年7-12月)。無料会員登録で、月5本読めます。
科学研究費 基盤(S) (代表:立松)により、野辺山45m望遠鏡用新受信機7BEE(7ビーム3バンド両偏波)を大阪公立大などと開発・製作。搭載し、科学的観測をはじめました。
「カネのない宇宙人」 Nドキュポケット(4分間の動画)、ギャラクシー賞テレビ部門大賞に輝いたドキュメンタリー(1時間番組)のエッセンスです。
南牧村クラウドファンディングー>目標300万円に対し約700万円の支援をいただきました。温かいお気持ち、心から感謝いたします。
オリオン座「もうすぐ星が生まれる場所」目録完成 ―「謎の二つ目玉」原始星の発見―
山根一眞先生の本 『スーパー望遠鏡「アルマ」の創造者たち』 の第1章に登場します
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現在行っている研究
  • 野辺山宇宙電波観測所45m電波望遠鏡の長期共同利用で採択された国際共同研究「Planck Cold Clump観測」のリーダー。2年間で350時間の観測。重水素を含む分子を使って、星が誕生する直前直後の分子雲コア(星の材料)をみつけ、どうして星の誕生プロセスがはじまるのか(安定な星なしコアが不安定になり、星の誕生がはじまるのか?これは未解明の問題です!) を調べている。オリオン座で100天体、それ以外の大質量星形成領域で100天体を観測した。 うち、75天体はアルマ望遠鏡で詳細追加観測済み。関連研究論文はすでに5本出版された。


    アルマ望遠鏡が観測した重力レンズ銀河SDP.81,Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO); B. Saxton NRAO/AUI/NSF; NASA/ESA Hubble Space Telescope; ALMA Partnership, C. Vlahakis, et al. (K. Tatematsu as the last author), "The 2014 ALMA Long Baseline Campaign: Observations of the Strongly Lensed Submillimeter Galaxy HATLAS J090311.6+003906 at z=3.042," ApJ, 808, L4 (2015)


    (左)アルマ望遠鏡が観測した惑星誕生の現場HL Tau, Credit: ALMA(ESO/NAOJ/NRAO); ALMA Partnership, C. L. Brogan, et al. (K. Tatematsu as the last author), "The 2014 ALMA Long Baseline Campaign: First Results From High Angular Resolution Observations Toward the HL Tau Region," ApJ, 808, L3 (2015)
    (右)惑星系形成の理論シミュレーション(理論的予想)。アルマ望遠鏡の建設前に我々が目指していたもの。真実は、想像より奇なり!
    G. Bryden et al. ApJ, 540, 1091 (2000); see also G. Bryden et al. ApJ, 514, 344 (1999)
    オリオン分子雲中の星誕生直前のコアの発見 Ken'ichi Tatematsu, Tomoya Hirota, Satoshi Ohashi, Minho Choi, Jeong-Eun Lee, Satoshi Yamamoto, Tomofumi Umemoto, Ryo Kandori, Miju Kang, Norikazu Mizuno, "Thermal Starless Ammonia Core Surrounded by CCS in the Orion A Cloud," Astrophys. J., 789, 83 (2014); Erratum: 790, 165 (2014)
    太陽を含めた大多数の恒星は「巨大分子雲」と いう宇宙にうかぶ雲で誕生すると考えられてい る。これまで、恒星が誕生する直前と思われる 場所が、数か所程度発見されてきたが、それら はすべて、「暗黒星雲」という、より小さな雲 においてのみであった。今回、オリオン座の 大星雲のすぐ近くにあるオリオン座「巨大分子雲」 において、恒星が誕生する直前である可能性が 極めて高い場所「コア」を発見した。これは巨 大分子雲における初めての例である。このコア からは星が数個程度の集団で誕生する可能性が あると考えられる。このコアは、太陽のような 恒星が、どのように誕生するかを調べるうえで 大変貴重な天体と考えられる。

    右上: オリオン大星雲の光学写真:(c)Hiromitsu Kohsaka
    背景:オリオン座分子雲の電波写真(野辺山45m電波望遠鏡、立松ほか)。オリオン大星雲から南(下)にのびる分子雲が見える。
    左: 米国ジャンスキーVLA電波望遠鏡(25mアンテナ27台)の観測で発見された星誕生直前の分子雲コア(立松ほか2014)。70倍の拡大画像となる。

    我々はJansky Very Large Arrayを用いて、オリオン座A巨大分子雲中の2つの星なしコア TUKH083とTUKH122をCCS輝線とNH3(アンモニア)輝線で観測した。 TUKH022は、1つのNH3コアTUKH122-nを持ち、単純な楕円形の形をしていることが分かった。 CCS輝線は、NH3コアを囲むように分布していることが分かった。 この形状配列は、原始星降着運動を示す牡牛座暗黒星雲内の星なしコアL1544 に酷似している。 TUKH122-nのNH3輝線ライン幅は0.2 km/sと細く、熱的運動が優勢である。 TUKH122-nは、運動温度(10 K)、サイズ(0.03 pc)、ビリアル質量(2 Mo)の 点で、L1544に類似している。 星なしコアの中では最も高いN2H+/CCS柱密度比(立松+2014a) を持つことも合わせて 判断すると、 TUKH122-nは、巨大分子雲中の星形成直前のコアと考えられる。 これは、巨大分子中で最初の発見であり、銀河系の星のほとんどが巨大分子雲で生まれることを 考えると、普通の星がどう生まれるかを理解するために極めて重要なターゲットと考えられる。 TUKH122-nは30 Moの乱流的なparent core中にあるのに対し、 L1544は10 Moの熱的なparent core中にある。 TUKH122は、クラスター形成領域TUKH123に隣接している。 parent coreの質量の違いが、クラスター形成の可能性の違いに 結びついている可能性がある。 TUKH083は、NH3輝線では複雑な形状を示すが、CCSでは受からなかった。 CCSは広がっており、干渉計観測ではresolved outしているらしい。
    オリオン座分子雲
    野辺山宇宙電波観測所の45m電波望遠鏡でとった オリオン座の分子雲の電波写真です。


    オリオン座 A 巨大分子雲 野辺山45m電波望遠鏡
    右のカラー: N2H+輝線 (Tatematsu et al. 2008)
    右のグレースケール:CO輝線 (Shimajiri et al. 2011)
    左: 参考のための光学写真:(c)Hiromitsu Kohsaka


    おうし座 分子雲コア 牡牛座 暗黒星雲 分子雲コア 野辺山45m電波望遠鏡 N2H+輝線 ((c) Tatematsu, Umemoto, Kandori, Sekimoto 2004)
    オリオン座分子雲のCS(1-0)輝線マップ オリオン座分子雲の階層構造
    日本のミリ波・サブミリ波電波天文学の推進に 貢献していきたいと思います。 趣味は、写真撮影(風景、 昔は 天体写真最近もほんのすこし)、 屈折望遠鏡などの各種天体望遠鏡をめでること ( 高橋P型極軸望遠鏡メモ)、 ハムスター の飼育。

    私のカメラ 私の車



    おかえりはこちら(野辺山宇宙電波観測所ホームページ)