[ Japanese | English]
On-The-Fly (OTF) 観測とは、 観測領域を連続的にスキャンしながら短い時間間隔(45m鏡のシステムでは0.1秒もしくは0.04秒)でデータを取得していくマッピング観測の手法です。 ビームに比べて十分広い領域を比較的浅い積分で掃く場合に、とくに効果を発揮します。 通常のposition switch観測と比較して、以下のような利点があります。
野辺山45m鏡のOTF観測システムについての詳細はSawada et al. 2008, PASJ, 60, 445 をご参照ください。 OTF観測で使用可能な受信機と分光計の詳細については ステータスレポートをご参照ください。
OTF観測におけるスキャンパターンの概念図を図1-1に示します。 図中「on-source」とあるのがスキャンの本走(以下、単に「スキャン」と呼びます)で、 この間アンテナは一定速度で駆動され、 tdump間隔でデータの取得が行われます。 スキャン中にアンテナが目的の方向を向くよう、 各スキャンの前に「approach」(助走)が入ります。 スキャンとスキャンとの間にOFF点が入らない場合(図1-1中)には スキャン終了点からapproach開始点への移動「transit」が入ります。 以上は連続波のラスタースキャン観測の場合と同様です。
通常のposition switch ("step-and-integrate")観測と同様に、 観測の最初、および観測中の適当なタイミングに "chopper-wheel"キャリブレーション(R-SKY)データを取得する必要があります。 OFF点は各スキャンの前、あるいは数スキャンに1回の割合で取得します。
図1-1:スキャンパターンの概念図。
(上) 観測シーケンス「1*」 (OFF-ON)の場合、
(中) 観測シーケンス「1**」 (OFF-ON-ON)の場合。
(下) FORESTを用いる場合のスキャン例(FORESTのビーム回転角についてはこちらを参照してください)。
観測の結果として、Nyquistレートより細かい間隔で取得されたデータ点によってマップ領域が埋め尽くされます。 データ点は規則正しいグリッド上には並ばないので、 convolutionをかけることにより正方格子のマップを作成します (convolution関数についてはこちら)。
OTF観測では、以下のパラメータを設定します。
一方向のスキャンのみではscanning effectが残ることがあります。 直交する2方向のスキャンを取得し、後からbasket-weaving処理することにより改善されます。 リダクションソフトにはEmerson & Gräve (1988)の手法(PLAIT)を実装しています。 データリダクションの項目をご参照ください。
45 m OTFでの観測時間と感度の見積もりは、以下リンクの
により行います。
* Parameters : 1.Receiver = FOREST 2.Pol = Double 3.Frequency = 115 GHz 4.Max Elevation [deg] = 60 5.Length along the scans [arcsec] = 1200 6.Length perp. to the scans [arcsec] = 1200 7.Time for scan [sec] = 20 8.Num. of ONs per OFF = 1 9.Separation between scans [arcsec] = 5 10.Map grid [arcsec] = 6 12.OFF-point separation [arcmin] = 40 12.Tsys_inp [K] = 300.0 13.Resolution - Frequency resolution (kHz) = 100 - Velocity resolution (km/s) = 14.Convolution function = Bessel*Gauss * Results : 1.theta [deg] = 0.0 2.Beam overlapped area = 1150.0 ["] * 1150.0 ["] 3.vscan is 60.0 ["/sec] (6.0 per 0.1s sample) 4.Nrow = 231 5.tapp [sec] = 7, ttran [sec] = 8, ttranoff [sec] = 12 6.tOFF = 4.7 [sec] -> 5 [sec] 7.tOH = 31.0 [sec] 8.ttot(ON) [min] = 77.0 9.ttot(OBS) [min]/[hour] = 230.0 / 3.83 10.eta(ON/OBS) = 0.33 11.tcell(ON) [sec] = 4.13 12.tcell(OFF) [sec] = 48.00 13.Tsys_inp [K] = 300.0 14.Tsys_obs_sa[K] = 306.0 15.dTa*_sa [K] = 0.5641 16.Tsys_obs_sb[K] = 422.8 17.dTa*_sb [K] = 0.7794 18.Version = 2.0170721
で、最適OFF積分時間は5秒、約80分の観測でSemester Aの場合、 ΔTA*=0.56 [K] が達成されます。 4ビームが重なる領域は約1150秒四方です。 実効空間分解能は約17"となります(望遠鏡のビームが15"の場合)。 実効空間分解能についてはその他の情報: マップ作成時のconvolutionを参照してください。
観測テーブルの作成には、"nobs"を用います。 nobsの使用法についてはnobsマニュアルを参照してください。 OTF観測を行うには、"Scan Tab"でOTFモードを指定してください。 作成した観測テーブルのスキャンパターンはobspointにより確認できます。 また、FORESTのビーム回転角についてはこちらを参照してください。
データダウンロードに関しては、このページ をご覧下さい(所内から、もしくはVPNでアクセスする必要があります)。
リダクションソフトウェア"NOSTAR"を用います。 こちらを参照してください。
感度計算の詳細、実効空間分解能、投影法に対する諸注意などは、その他の情報を参照ください。
Scroll back to the Top