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Last Update: 8th May 2019
観測したい周波数で性能が最適化されるよう、受信機をチューニングします。 一般的には、受信機チューニングは観測の初めに一度行う必要があります (もし同じ周波数で同じ日に別の周波数設定で観測を行う場合には、設定を変えるたびに受信機をチューニングします)。 受信機によりチューニングの仕方が異なるため、本ページでは受信機ごとに分けて方法を解説します。 以下の手順に進む前に、ミラーの向きの切り替えを参考にミラーを切り替え、使いたい受信機に信号が入る状態にしておいてください。 なお、連続波観測の場合は、これ以外にも望遠鏡内部での調整が必要となりますので、デバイステーブルを印刷の上、 アシスタントにお渡しください。
T70受信機はチューニングモニター(下図7)上のプログラムを使ってチューニングを行います。
チューニングマシンは遠隔で望遠鏡内部のマシンとリモートデスクトップ通信をしています。 通常、リモートデスクトップ接続済みになっているはずですが、そのようになっているか確認します。 もし、接続が切れている場合には、画面左下の"スタート"メニューからリモートデスクトップを選択し、接続を行います。 アカウント名等は記憶されているはずですが、もしされていなかった場合はアシスタントにお尋ねください。
各受信機はEL=70度でチューニングすることを前提に調整されています。 アンテナコンソールの"TUNING"ボタンを押すとAz方向のみ天体を追尾しつつ、ELは70度で固定できます。 観測に移るときに"ALL PROG"、"SLAVE"ボタンを押して観測モードに戻すことを忘れないようにしてください。
各チューニング用プログラムは起動しただけでは動作しません。 下図に示すように、プログラム上部の矢印ボタンを押して動作させる必要があります。
2SB受信機であるT70では、チューニングを行うとともに、サイドバンド比(Image Rejection Ratio: IRR)を測っておくことで、 のちのデータリダクション時にシステム変動を補正して主ビーム温度(TMB)へ変換させることができるようになります。 特に標準天体でも目的の輝線強度が弱い(TA*< 数K程度)ことが想定され、 標準天体観測が難しい場合は、必ず測定するようにしてください。
ここではT70受信機のチューニング手順を紹介します。
プログラム名はT70tune**.vi
です。
通常、このプログラムは立ち上がっている状態です。
立ち上がっていなければ、デスクトップ上のショートカットをダブルクリックして起動します。
停止する際はプログラムの左下の"STOP"ボタンをクリックします。
チューニングソフト左上にある矢印ボタンを押すと実行状態に移行します。
Upper Sideband (USB)のみ、Lower Sidband (LSB)のみ、USBとLSB両方の3種類の中からデバイステーブルの設定に合わせてひとつ選択
天気が悪くないのにY-Factorが悪い(1dB以下)ときはミラーの切り替えやMMCがrotate状態であることを確認してください。
観測する輝線の数などで決めます。
例:
IF 6GHzに輝線1本のみ: start=6GHz, stop=6GHz, number=1 ...IF=6GHzのIRRのみを測定
複数輝線を観測する: start=4GHz, stop=8GHz, number=17 ...IF=4-8GHzを0.25GHz間隔で測定
IRR測定にはおおむね10点で2-3分かかります。
指示が出されるのでそれに合わせてMMCのボタンを押していきます。 1偏波ごとに順番に行ってください。
下部のSAVEボタンを押すとビーム、偏波、測定日時(ボタンを押したタイミング)で命名されたテキストファイルを保存します。 保存場所はデフォルトで、"T70IRRdata"という名前のディレクトリに保存されます。
再び上部の"Tuning"タブボタンを押してタブを切り替え、中央左側にある"Observation mode"ボタンを押します。 以上で、チューニングとIRR測定が終わり、観測ができるようになりました。
IRR測定した結果のテキストデータを忘れずにファイルをUSBメモリなどにコピーしておきます。 USBメモリは事前にウィルスチェックをしておいてください。 ファイルはローカルのデスクトップ(リモートデスクトップではありません)に "T70IRRdata"というディレクトリショートカットがありますのでそこからコピーしてください。
ページトップへ戻るH22、H40、Z45受信機を使った観測を行う場合は、ミラーを切り替えて受信機に信号が入るようにした後は、 COSMOS GUIで観測スクリプトを選んで、START OBSERVATIONを押して、観測を開始します。 (2015年観測シーズンまではH22、H40受信機はチューニングやシンセサイザーの切り替えなどが必要でしたが、 2016年観測シーズンからはこれらの作業は要らなくなりました。)
ページトップへ戻るFOREST用モニター群は気象モニターとT70受信機チューニングモニターの右側にあります(下図6)。
左:FOREST用モニター上側。左はサーバ通信用(観測者は特に使用することはありません)、右はwebモニターでFORESTを上部から映しています。
右:FOREST用モニター下側。左はFORESTステータスモニター、右はチューニング用ターミナルです。
FORESTのチューニングは、FOREST用モニター下の右端のリモートデスクトップに表示されているターミナルを用いて行います(下図)。 FORESTを使った観測では同じ手順を通るため、キーボード上矢印キーからコマンド履歴を利用すると、早く、楽にチューニングすることができます。
まず、受信機を初期化するため、ターミナルに以下のコマンドを入力します。
> forest_initialize.py
チューニングは、事前に観測所が測定し決定した最適パラメータを呼び出すことで行います。
以下のコマンドでチューニングを実施します。
> forest_SIS_tune.py tuning/loXXG-UL_step3_yyyymmdda.cnf
ここで、XXにはLO周波数、ULは、観測するサイドバンド(Upper Sideband[USB], Lower Sideband[LSB] or USB/LSB)、
yyyymmddaは観測所側でパラメータを決定した日時が入ります。
LO周波数には、デバイステーブルで指定した値に最も近い周波数のものを選んでください。
例えば、2017-2018年観測シーズンのチューニングパラメータとしては、以下のものを用意しています。 (観測シーズン中に受信機の性能変化のためにパラメータファイル名が変わる可能性があります。) FORESTを用いた観測の際には、事前に観測所から使用するファイル名をPIにお知らせしますので、そのファイルを指定してください。
LO Frequency [GHz] | Sideband | Name of a Parameter File |
---|---|---|
86-88 | USB/LSB | lo86G_UL_step3_20161130i.cnf |
89-93 | USB/LSB | lo92G_UL_step3_20161104a.cnf |
93-96 | USB/LSB | lo94G_UL_step3_20171121d.cnf |
97-100 | USB/LSB | lo95G_UL_step3_20170329e.cnf |
100-102 | USB/LSB | lo101G_UL_step3_20161122w.cnf |
102-104.5 | USB/LSB | lo104G_UL_step3_20161122e.cnf |
105 | USB-H/USB-L | lo105G_U_step3_20170224a.cnf |
107-110 | USB-L | lo109G_UL_step3_20161129k.cnf |
チューニング後、FORESTの性能を確認するため、
システム雑音温度(Tsys)とサイドバンド分離比(Image Rejection Ratio: IRR)を各IF周波数ごとに測定します。
まず、アンテナコンソールからTuningボタンを押し、ELを70度にします。
この後、以下のように測定コマンドを実行します。
> exp_irr_with_IF_freq_sweep.py --lo_freq 105.2 --start 4 --stop 12 --step 1
lo_freqはプロポーザル投稿時に合わせて送っていただいた周波数設定エクセルファイル(DeviceSetting_***_.xlsx)中で指定した1st LO freq.(GHz)、
start、stopは測定を開始、終了するIF周波数[GHz]で、
USB-Lが4-8GHz, USB-Hが7-11GHz, LSBが4-8GHzの帯域を持っています。
stepはstart-stop間でTsys、IRRを測定する間隔[GHz]です。
1st LO freq. は、小数第一位までで十分と考えられます。
(より下の桁を入力していただいてもかまいませんが、受信機性能は比較的平坦ですので、必ずしも必須ではないと考えられます。)
これらの値は観測周波数や輝線の数で調整します。
所要時間は測定点数によって変わりますが、IF=4-12GHzを1GHz間隔で取得して概ね1分ほどです。
上記の例では、LO=105.2GHzでIF=4-12GHzを1GHz間隔で測定することになります。
測定が終了すると、ターミナルに数値で、FORESTモニター右下にプロットで結果が表示されます。 このモニターのプロットをクリックすると、拡大してみることができ(下図)、 プロットの下の文字列(***.zip)をクリックすれば、データを持ち帰ることも可能です。
TsysとIRR測定結果の例。 Tsysが青(右軸)、IRRが黒(左軸)で示されています。 また、ビーム、偏波、サイドバンドの関係は以下の図の通りです。
これで、FORESTのチューニングは終了です。
以下のコマンドを実行して、観測中に誤動作を起こさないようにします。
> forest_start_observation.py
観測が終了したら、以下のコマンドでFORESTチューニングマシンへの入力待機状態に戻します。
> forest_end_observation.py
最後に、FOREST自体も待機状態にして観測を終了します。
> forest_finalize.py
コマンド入力を誤った、何らかのトラブルが生じた、といった原因によって、コマンド動作が正常終了しなかったり、動作中にターミナルから反応がなくなってしまうことがあります。 原則、観測所側での状況把握のためにもアシスタントに報告と対応の依頼をしていただくことが望まれますが、 このような状況では、以下の手順によって解決できることがあります。 (この方法によってご自身で解決された場合にも、アシスタントに報告をお願いいたします。)
> rforest_end_operation.py